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写真 「スマトラ沖地震による津波の被災地では200万人以上が食糧援助を待っている。この半年でまず9億7700万ドル(約1000億円)が緊急に必要であり、各国は支援の約束をまず現金にして送ってほしい」 (東京新聞1月6日付)
アナン国連事務総長

1月6日、インドネシア・ジャカルタで開催された復興支援緊急首脳会議であいさつし、15万人超の犠牲者が出た津波被災地への具体的な支援を各国に求めた。


 緊急首脳会議は、それまでの「コア・グループ」(米国、日本、豪州、インド、カナダ、オランダ)主導の支援から国連中心の支援態勢に切り替わるきっかけの場になった。スマトラ沖地震による津波被害は50万人が負傷し、今なお100万人以上が避難生活を送っているという未曽有のものだけに、アナン事務総長の支援要請は、細かな内訳と金額を具体的に明示する異例の内容だった。この背景には、これまで災害のさいに各国が行った支援表明の多くは複数年にわたるのが実際で、なかには約束だけに終わるケースもあったからだ。現に今回もドイツは5億ユーロ(約700億円)を3〜5年間で支払うことを表明している。支援額が一番多い豪州は10億豪ドル(約800億円)で、こちらも分割払いの予定だという。

 首脳会議には26カ国・国際機関が参加したが、支援金額をめぐっては、主要国が競うように上積みを表明するなど、さまざまな思惑を秘めた“外交ゲーム”が展開された。日本の場合、小泉首相が町村外相とともに出席し、年末にいったんは3000万ドルと決めた無償資金供与額を約5億ドル(約520億円)に引き上げたうえ、率先して「20日までに振り込む」(町村外相)と明言した。これは、国連の常任理事国入りを目指すライバルのドイツやインドを意識したものであり、「顔の見える日本外交」(外務省幹部)をアピールする狙いがある。

 また、米国と中国もその存在感を競い合っている。中国は、「過去最大規模の対外援助」(新華社通信)というように、当初の2160万元から5億元(約62億円)と支援額を大幅アップさせた。中国にとっては、今回の支援をASEAN諸国との関係強化に役立てたいという思惑がある。米国は、支援額を最初の額から10倍に増やした3億5000万ドルとするいっぽう、出席したパウエル国務長官があっさりとコア・グループの解散を決めた。また、協調姿勢を示し、物心両面の支援強化を約束するなど超大国の面目を保つのに躍起だった。

 興味深いのは、被災国でもあるインドとタイが、それぞれ支援を返上したことだ。インドは「国内の備蓄で足りる」(シン首相)と、逆にスリランカとモルディブへ援助隊の派遣を申し出るという大国のプライドを示した。核保有国であるインドも日本と同じように安保理常任理事国入りを希望しているし、タイも2月に総選挙を抱えているという事情がある。また、北朝鮮が15万ドル(約1560万円)の支援を発表したのも目を引いた。1月11日現在、支援総額は50億ドル(約5200億円)を超える見通しだが、迅速な支援活動の展開が急務なだけに、改めて国連の存在感が問われている。



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