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この人の重大発言

写真 「去年、小泉首相に年間、全場所の優勝を約束したが、果たせなかったので、今年こそがんばりたい」
(1月25日付毎日新聞)
朝青龍・横綱

1月24日、首相官邸で小泉首相から内閣総理大臣杯日本プロスポーツ大賞を授与されたあと、記者団に感想を求められて。


 番付表で“ひとり横綱”を続ける朝青龍が、大相撲初場所(1月9〜23日、国技館)で15戦全勝し、前場所につづき優勝を果たした。全勝優勝はこれで3回目、モンゴル相撲出身の気合を見せつけることになった。また1999年1月の初土俵から37場所目で10回の優勝は史上最速で、大鵬の持つ記録も塗りかえた。いっぽう全勝優勝は、8回の大鵬、7回の北の湖、千代の富士、4回の貴乃花に次ぐもので、北の富士、輪島に並んだ。

 日本人力士のなかで注目されたのは、綱とりを目指す大関・魁皇と、大関昇進を狙う関脇・若の里の活躍ぶりだった。しかし、魁皇は4勝5敗になったあと、けがのため10日目から休場し、若の里も6勝9敗と負け越した。「魁皇の綱とりは全国から期待されていただけに、出直しとなり、残念な結果になった」(石橋義夫・横綱審議会委員長)とファンらを落胆させた。せめてもの救いは、関脇・栃東が11勝4敗で、「2場所連続して負け越したときは翌場所で10勝以上」というハードルをクリア、2度目の大関復帰を果たしたことだ。

 かたや外国人力士たちの勢いはいっこうに衰えを見せていない。初場所の番付表をみると、朝青龍を筆頭に白鵬(関脇)、旭天鵬(前頭6枚目)、旭鷲山(10)、朝赤龍(11)、安馬(13)、時天空(17)の7人のモンゴル勢、琴欧州(4、ブルガリア)、露鵬(5、ロシア)、黒海(3、グルジア)春日王(14、韓国)の各力士たちが並ぶ。国技として400年におよぶ歴史と伝統のある大相撲だが、力士の多国籍化は、米国ハワイ出身の関脇・高見山(現在の東関親方)以来、いまや幕内42人のうち、じつに11人を占めるにいたった。弱冠19歳の白鳳は、前場所の準優勝につづき11勝4敗、敢闘賞を受けた。大関昇進も目前で、日本人力士の不甲斐なさが目立つ初場所だった。

 「相撲の神様」といわれた横綱・双葉山(のちに時津風親方・日本相撲協会理事長)が安芸の海に左外掛けで負け、連勝を69でストップさせたのが、1939年1月15日、66年前のことだ。年間2場所制だったとはいえ、4年、7場所かけての偉業だった。1980年9月27日生まれ24歳の朝青龍がこの不滅の大記録を破り、6場所連続優勝を達成する可能性は大いにある。だが、日本人力士が奮起して、かれら外国人力士を打ち負かしてほしいと願っている大相撲ファンは少なくないはずだ。栃錦・若乃花や大鵬・柏戸、輪島・北の湖など好敵手が並存した黄金時代を知るファンならなおさらだろう。

 北の湖理事長はじめ相撲協会関係者や識者は、日本人力士の力が衰えた理由として、(1)力士がハングリー精神に欠け、勝負根性が希薄になっている、(2)サッカーなど、ほかのプロスポーツ競技に人気が集まり、相撲への関心が薄れた、(3)古い慣習が支配的な相撲社会に魅力がない――ことをあげる。横綱審議会委員を14年間務めた渡邉恒雄氏(読売新聞会長)は「大相撲は今後、三役、横綱全員が外国人になることもあり得る。野球は外国人枠を設け制限しているけれど、あれはよくない。日本人選手の働くポジションが減るということでしょ。そういう考えはけちくさい」と語っている(毎日新聞、1月25日付)。しかし力士の多国籍化が進んでも、日本人力士に気合が感じられないのでは、ファン離れに歯止めがかかるはずもない。



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