堤義明氏は、昨年10月に西武鉄道株の偽装名義問題が発覚した後、コクド会長はじめ西武グループすべての役職を辞任した。その後、コクドと西武鉄道は、諸井虔・太平洋セメント相談役を委員長とする西武グループ改革委員会を発足させた。西武グループの再生には、非上場会社のコクドが、しかもその会長で筆頭株主の堤氏が、系列の西武鉄道や西武不動産、プリンスホテル等のグループ会社を事実上支配してきたという特異な事業構造を抜本的に刷新する必要があったからだ。改革委は1月28日、中間報告として、コクドを分割し、新会社と西武鉄道、プリンスホテルを合併させ、さらに増資による財務体質の改善を行ったうえで堤氏の影響力を排除する案を発表した。
西武グループの創業者・堤康次郎氏の4男、康弘氏(ちなみに義明氏は3男、異母兄の清二氏は2男)は、これまでの沈黙を破り、1月20日、改革委に提出した要請書のなかで、「コクドが保有する株の大半は堤家の財産だ」と主張するとともに、1964年4月に死亡した父康次郎氏の相続税の大半を納付していないことも打ち明けた。また、株の名義偽装は堤家の相続対策の一環として行われたことを公表し、「前会長は堤家の財産が千分の一になろうとも、謝るべきを謝り、償いをしなければならない」と語った。
いっぽう、堤義明氏は、株偽装問題をめぐり、証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載、インサイダー取引)容疑が問われているが、コクド、西武鉄道とともに、個人株主213人から2月1日、東京地裁に損害賠償請求訴訟を提起され、東京地検に刑事告発もされた。これとは別に、東京地検特捜部と証券取引等監視委員会が実態解明のために関係者の事情聴取を進めており、国税庁が2月4日、新たにコクドの税務調査に着手した。こうした一連の疑惑は、そう遠くない時期に捜査当局によって事件として明らかになりそうだ。
総会屋に利益供与して商法違反に問われ、西武グル―プのコンプライアンス(法令順守)の欠如がすでに明るみに出たが、今回の不祥事につながっていったグループ経営――利益と借金の利払いを相殺(そうさい)して法人税の支払いを極力減らすいわゆる"西武式節税"や、自宅や自分の別荘を会社の社宅や保養所名義で保有する不透明な資産管理、義明氏自身が発行済みコクド株の36%を保有、残りの50%近くを社員名義に偽装して実質的に保有した独特の経営――などが解明されることになろう。
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