ケニアのワンガリ・マータイ環境副大臣は、2月16日、「京都議定書」(地球温暖化防止のため先進国に温室効果ガス削減を義務付けた)発効記念行事に出席するために来日、小泉首相を表敬訪問した折、首相に日本語の「もったいない」という言葉に感銘を受けたことを話し、「プラスチックが一度使っただけで廃棄されるなど、アフリカでは多くの『もったいない』例がある。『もったいない』という概念を世界に広げたい」と約束した。冒頭の発言は、国連の演説の一部だ。
ワンガリ・マータイさんは、1940年生まれ。ナイロビ大学で、東アフリカ出身の女性として初めての博士号を取得した。77年、有志とともにNGO「グリーンベルト運動」を創設、植林運動を続けながら、貧しい人々の社会参加や女性の地位向上などケニアの民主化に取り組んできた。現在、ケニア全土にある苗床は、約1500カ所。苗木は3000万本。約8万人が植林に参加している。2002年、国会議員に当選、03年には環境副大臣に就任し、これまでの活動に対して04年度のノーベル平和賞を受賞している。
国連での演説で、マータイ環境副大臣は、「限りある資源を有効に使い、みなで公平に分担すべきだ。そうすれば、資源をめぐる争いである戦争は起きない」と強調し、京都議定書を批准せず、温室効果ガスを大量に排出している米国や、途上国扱いで削減義務を免れている中国を名指しして、その不公平な現状を批判した。
評論家で台湾出身の金美齢氏は、この「もったいない発言」について、「興味深い発言だ」としたうえで、この言葉には(1)日本人の、自然の恵みを無駄にすることを冒涜(ぼうとく)とする、畏れの念が込められている、(2)万物に霊魂を感じる日本独特のアニミズムの感覚をみる――というユニークな含蓄がある、と評価した。その反面、「中国人は自分の懐(ふところ)が痛むのでない限り、自然の乱用や公共資産の浪費を気にする感覚は希薄だ」と指摘し、日中両国がこうしたことについては対照的な考えを持っていることを紹介した(産経新聞、3月6日付)。
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