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この人の重大発言

写真 「北朝鮮が主権国家であることは誰も否定しない。われわれは、北朝鮮を攻撃する意図がないことを繰り返し表明してきた」 (朝日新聞3月19日付)
ライス米国務長官

3月19日、来日したライス国務長官は、上智大学で講演したなかで、「ならず者国家」だったはずの北朝鮮をはじめて「主権国家」と呼んだ。


 ライス国務長官は、3月15日から21日までの間、インド、パキスタン、アフガニスタン、日本、韓国、中国の順で訪問した。このうち日韓中の首脳、外相らとの会談の主要な目的は、昨年6月以来中断している6カ国協議の再開へ向けた地ならしだった。日本での講演では、北朝鮮に対して、「核兵器開発計画を終了させれば、多国間で安全を保障する用意がある。エネルギー需要も調査する」と協議への復帰を呼びかけた。その一方で、「米国と民主主義国家は、北朝鮮の人々の窮状、体制の本質、体制による隣国の罪のない市民の拉致、核武装による地域全体への脅威に対し、沈黙はしない」とも批判した。上記の発言は北朝鮮に6カ国協議への復帰をうながす中でのものだった。

 2001年以来、ブッシュ大統領は北朝鮮を「ならず者国家」、あるいは「悪の枢軸国」のひとつであると非難してきた。ブッシュ大統領の補佐官だったライス国務長官も議会証言のなかで「圧政の拠点」のひとつという言葉を使ったほどだった。したがって「主権国家」の発言は、北朝鮮に対する従来の姿勢を改めたのか、と受け取る向きもあった。しかし、実際は、北朝鮮が米国に対して抱く威圧感を取り除き、合わせて、中国が北朝鮮に影響力を行使しやすいようメッセージを送るためだったとの見方が支配的だ。

 日本における首脳会談では、ライス国務長官は、「北朝鮮が尊敬と援助を獲得する唯一の方法は6カ国協議だ」として、「早期、無条件での協議再開と中国のいっそうの役割を求める」ことで一致した。また韓国では、「6カ国協議の枠内で、米朝2国間対話を含む多様な論議が可能だ」との点で意見が一致した。しかし、中国では「早期再開を目指す」ことでは合意したものの、中国側は米国に、対北朝鮮政策に柔軟性をもつよう求めた。これに対し、ライス国務長官は、21日の北京での記者会見で、北朝鮮がこのまま参加拒否を続ければ「別の選択肢があるのは明らかだ」と語り、国連安保理へ付託して経済制裁に踏み切る可能性があることを示した。

 6カ国協議は、さる2月10日、北朝鮮が無期限中断を宣言したため議長国である中国が仲介して復帰を呼びかけ、「条件が整えば参加する」と北朝鮮の態度を軟化させたところだった。今回のライス国務長官の日韓中歴訪は、こうした環境をもう一歩進めるため、「中国を当事者として関与させる」(町村外相)狙いがあった。これを受けて22日、温家宝・中国首相と朴奉珠・北朝鮮首相が北京で会談し、中国が協議再開を強く迫った。これに対して、北朝鮮は「条件が熟せば、いかなる時でも協議に参加できる」と改めて米国の譲歩を求めている。こうした情勢を考えると、6カ国協議の先行きについては、打ち切るのか、継続するか、とりわけ米国の決断の時期が近づいたとの見方が出始めている。



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