中国や韓国の首脳、外相が最近、「小泉首相の靖国神社参拝がいまの状況をもたらしている」と、反日デモなど、日中、日韓の関係悪化の責任は小泉首相の歴史認識の誤りにあると認識を一致させている。これに対し、町村外相が政策演説で「誤解だ」と反論(4月30日、ニューヨークで)、「首相が参拝するのは、二度と戦争をしてはならないことを誓い、戦場に赴かなければならなかった方々に哀悼の誠を捧げるためだ」と強調した。
小泉首相自身、インドネシア・バンドンで開催されたアジア・アフリカ首脳会議に出席し、「痛切なる反省と心からのおわびの気持ちを常に心に刻み込む」と謝罪の意を込めた演説を行った(4月23日)。しかし、その後も中国の李外相は町村外相に対し、「A級戦犯を祀っている靖国神社への参拝は、絶対にしないようにしてほしい」と強く要求(5月7日)、依然として厳しい姿勢を変えておらず、さすがの首相も腹にすえかねたのか、冒頭の発言となった。
国家間の歴史認識の食い違いは、米国とロシアの間でも4月初旬、第2次大戦の戦後処理を決めた「ヤルタ協定」(1945年2月、米英ソの連合国3首脳が会談し、ソ連の対日参戦や北方領土の割譲などを決めた)の評価をめぐって表面化した。ブッシュ米大頭領は、「ヤルタ協定は世界史上、不法行為の最たるもののひとつ。大戦の勝利はファシズムの終わりを記したが、圧政の終わりではなかった」と旧ソ連の中東欧支配を認めた同協定を批判した。これに対し、プーチン・ロシア大統領は、「ナチズム復活を許さない新国際秩序を構築し、地球規模での紛争から世界を守り、国際連合も創設された」とその意義を評価した。
靖国神社参拝問題をめぐっては、自民党では、安倍晋三幹事長代理の「国のために殉じた方々に対して、尊崇の念をささげるため靖国神社にお参りするのは、一国のリーダーとして当然のことだ。外国から行くなと言われる筋合いのものでない」(04年11月23日・岐阜市での講演で)という意見に代表される議論が大勢だが、反論もある。河野洋平衆議院議長は、「靖国参拝は中国側には受け入れられないメッセージだ。配慮を欠いた言動が関係を悪くしている。トップはひとりだが、議員はたくさんいる。知り合った議員同士が親しくなり、個人的な友情が広がっていくことが望ましい」と注文をつけた。加藤紘一・自民党元幹事長も「問題の7、8割は小泉首相の靖国参拝。指導者は自国の国民感情と相手国の論理を両方見ながら判断しなければならない」という(ともに、東京新聞5月7日付)。
こうしたなか、先の補欠選挙で復活した山崎拓・首相補佐官は、5月7〜8日、中国を訪問して唐国務委員ら首脳と会談し、関係打開の方策を探った。帰国後の10日夜、首相と会い、「思慮深くよい知恵を探そう」との点で一致したことを報告した。山崎氏としては、首相が参拝を中止せず、A級戦犯の分祀も避けるという新たな対応策を打ち出したい意向のようだ。
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