自殺者が7年連続で3万人を突破した。10年前には交通事故死者の約2倍だった自殺者が、いまでは4倍以上、深刻な社会問題になった。とりわけ注意すべきなのが、インターネットで知り合った者たちによる集団自殺、いわゆるネット心中の急増である。
警察庁の発表によると、2003年が1年間で12件、34人、昨年は19件、55人だったのが、ことしは4月までですでに22件、59人と前年を早くも上回った。昨年の内訳は、20代が30人(男性18人、女性12人)でいちばん多く、30代14人、40代4人、10代7人だった。ところが今年は年齢層が広がり、さる3月には、神奈川県から家出した中学2年の14歳の少女が、40歳の男性と19歳の大学生とともに栃木県内で心中しているのが見つかった。また、愛媛県では50歳の男性がネットで知り合った女性と心中している。
見ず知らずの者が知り合うのは、「自殺サイト」と呼ばれるネットのホームページだ。ここに自殺を呼びかける書き込みがなされ、自殺志願者は自分と同じ悩みを持つ者の存在を知り、集団自殺に参加する。警察庁の有識者会議は、集団自殺は違法行為だとして、ことし4月、ネット上で具体的な自殺予告を書き込んだ人物の個人情報を警察に開示すべきとの報告書をまとめ、接続業者の業界団体に協力を呼びかけた。また、富山地裁は、さる8日、ネット心中で生き残リ、自殺幇助罪で起訴されていた22歳の男性に有罪の判決を言い渡した。
日本自殺予防学会の斎藤友紀雄常務理事は、「今のネット心中は連鎖的な広がりをみせているが、中心が20〜30歳代と、未成熟な世代の年齢が上がってきているのが特徴だ。ただ、ネット上には自殺願望者の救済を目的にするサイトも多数あり、サイトそのものの規制は、慎重に考える必要がある」という(読売新聞、6月2日付)。
ちなみに昨年1年間の全国の自殺者は、3万2325人。統計を取り始めた1978年以降、年間2万〜2万5000人台で推移していたが、98年に初めて3万人台を突破して以降、7年連続で3万人を超えている。このうち、7割の2万3272人が男性だ。遺書を残した男女1万443人の動機についてみると、病苦など健康問題が一番多く4087人、次いで事業不振や借金苦など経済・生活問題が3436人、家庭問題が1096人。ただ、30〜50代の男性だけにかぎると、もっとも多かった動機がいずれも経済・生活問題で、30代382人、40代702人、50代1235人。経済的に追い詰められた働き盛りの男性の姿が浮き彫りになった。
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