年2回行われる日韓首脳会談だが、今回は、約2時間のうち1時間50分が靖国神社参拝問題で占められるという異例の展開になった。会談後に行われた質問抜きの共同記者発表に象徴されるように、歴史問題では韓国側の不満が浮き彫りになった。
歴史認識については、事前の調整では(1)日本が無宗教の国立追悼施設の建設を検討する、(2)第2期の歴史共同研究として教科書委員会を新設する――ことで合意していたが、盧武鉉大統領は、これを「低い水準の2つの合意」と表現した。また、追悼施設の建設については、日本側の「検討」を「約束」と言い間違え、すぐあとに訂正した。大統領は、「失礼した。調整された文章では、検討するはずだった。約束と間違えてしまったので修正する」と言ったが、これは不信感の表明だった。
実際は、すり合わせの段階で日本側と折り合わず、会談の成果が期待できないため、韓国側は首脳会談そのものの中止を検討したほどだった。しかし、国内世論を考え、対日融和の姿勢をとるのはマイナスと判断、会談ではあえて強い調子で靖国神社参拝の中止を求めた。これに対し、小泉首相はこれまで通り「戦没者追悼のための参拝」を強調し、「未来志向の関係構築」を求めるにとどまった。日韓には、靖国参拝問題以外にも、領有権をめぐる竹島(韓国名=独島)問題と教科書問題の、いわゆる歴史認識3点セットを抱えるうえ、新たに生じた日本の安保理常任理事国加入問題が加わり、韓国では安易な妥協を許さない国内世論が形成されていた。
事実、盧武鉉大統領の発言は、この1年間で大きく様変わりしている。昨年7月21日の首脳会談後の会見では、「歴史問題は、私の任期中には公式に争点として提起しない」と言い切った。それが、12月17日には、「(首相の靖国参拝は)日本側で判断することを希望する」と日本の自主的判断を促し、ことし3月1日の抗日運動の記念演説では、「過去の真実を糾明し、心から謝罪し、賠償すべきことがあれば賠償し、和解しなければならない」と急転した。ちなみにこのとき、その前は20%台に落ち込んでいた政権支持率が50%近くまで上昇した。
日韓両国の国交が正常化してから6月22日で40年。ことしは「日韓友情の年」とされている。韓流ブームにわく日本では対韓感情は悪くないが、歴史認識や領有権問題など国家主権がからむ問題につては、韓国の対日感情は逆に悪化している。お互いの溝を今後どう埋めていくか、まだまだ時間がかかりそうだ。
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