郵政民営化法案が衆院を5票の僅差で通過して以降、解散、あるいは首相辞任の事態もありうる、との見方が広がり、小泉後継をうかがう実力者らの言動が活発化している。先陣を切ったのは、衆院で反対票を投じた平沼赳夫前経済産業相で、政権構想を盛り込んだ著書、『新国家論』を出版(7月10日)するとともに、テレビ出演などで「状況ができれば、決断しなければならない」と総裁選出馬を強くアピールした。また、除名されれば新党の結成も視野に入れているといわれる。
冒頭の谷垣財務相の発言もこうした動きを意識した発言とみられている。すでに財界人らとの会合で「ポスト小泉を考えなければいけないときは、もう少し具体的に肉付けしてお話申し上げたい。根本に人と人の絆が強まっていくことが大事だ」(7月9日、長野県軽井沢町で)と、後継レースに名乗りをあげていた。また、前回の総裁選に出馬した高村正彦元外相も「前回手を挙げたので、今回手を挙げないとすれば、特別な理由が必要だ」と再出馬を宣言した(7月10日)。
いっぽう、亀井静香元政調会長は、「首相が解散しようとするなら、党則の条項があり、首相をやめていただく」と、党則6条(所属国会議員と都道府県連の代表1人を合わせた総数の過半数から要求があった場合、総裁選を行う)をたてにリコールを行う考えを明らかにしている。また、森前首相がポスト小泉の有力候補にあげている福田康夫前官房長官は、外交政策やリーダー論を盛り込んだ対談本を出版、5月16日の衆院予算委員会では日中関係で小泉首相に注文をつけるなど、存在感を見せ始めている。マスコミの世論調査でダントツ人気の安倍晋三幹事長代理は、若手議員らと「平和を願い真の国益を考え靖国参拝を支持する会」を結成、先を見据えたグループづくりに乗り出した。
こうしたなか、小泉首相はあくまで参院における郵政民営化法案可決を目指して、強気の姿勢を崩しておらず、かりに否決や廃案、継続審議になれば不信任されたと受け止め、衆院の解散、総選挙を断行する構えだ。しかし、参院執行部や衆院内では、党分裂につながりかねない解散を避けようとする動きが強まりつつあり、現に19日には超派閥の議員グループが解散回避で合意した。表舞台の参院審議とは別に、水面下では派閥の合従連衡の可能性も含めて激しい駆け引きが展開されている。当の小泉首相は、4月30日、外遊先で記者団に対し、自身の後継者の条件について、「私の改革路線を継ぐ人」と明言した。首相は余力を残して辞めるのか。総選挙が行われた場合、勝敗の結果によっては、政界はガラリと変わりそうだ。
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