今週の必読・必見
日本を読み解く定番論争
日本の論点PLUS
日本の論点PLUSとは?本サイトの読み方
議論に勝つ常識一覧
執筆者検索 重要語検索 フリーワード検索 検索の使い方へ
HOME 政治 外交・安全保障 経済・景気 行政・地方自治 科学・環境 医療・福祉 法律・人権 教育 社会・スポーツ
この人の重大発言

写真 「小泉純一郎さんが総理大臣になってやったことは何か。ひと言でいえば、戦後文化とそれに立脚した自民党をぶち壊したことです」 (「現代」10月号)
堺屋太一・作家(元経済企画庁長官)

「団塊の世代」の名付け親である氏が「日本の明日は、かれらの活用しだいだ」と、「『黄金の10年』へのラストチャンスを逃すな」と題するレポートのなかで言及している。


 団塊の世代とは、一般に、1947年(昭和22年)から49年(昭和24年)生まれを指す。その数、日本の総人口の5%強にあたる約700万人。いま日本の生産人口=就業者が6400万人だから、その1割以上を占める巨大な人口の塊が、2007年から2010年のあいだに、定年をむかえる。よくいわれる「××年問題」の最大の難問がこの団塊の定年退職だ。年金の負担、リタイアにともなうGDPの減速、消費の低迷、貯蓄率の減少……と、日本社会の大きな変動要因になろうとしているのは、よく知られている。

 堺屋氏は、小泉総理が自民党をぶち壊したのはいいが、その結果、官僚主導を温存させてしまった。とりわけ今後に大きな心配の種を残したのは、改革の名のもとに、職縁社会、つまり、人びとが職場の縁(えにし)でつながっていた、日本特有の社会構造や心象風景をいっきに崩壊させてしまったことだ、という。つまり、日本は、欧米とくらべると、改革は15年ほど遅れていて、それ以降の社会のビジョンがまだできあがっていないところに、団塊の定年という、大きな節目が到来してしまった。これをどう乗り切るかで、よくも悪くも日本の未来は決まるというわけである。

 団塊個人の暮らしや生き方論は、よく論じられるが、日本社会や日本経済にどんな意味があるのかについては、まだ、十分な議論はない――では、どうすれば「黄金の10年」が迎えられるのか。

 これまで職縁社会で働いていた団塊の世代たちの社交や活動は、職場がらみが減って、居住エリアに移る。また60歳を過ぎても働くだろうから、自営業者がふえ、スモールオフィスやホームオフィスができる。消費意欲も旺盛だ。鍵は、この60歳代の巨大なマーケットの活用にある。雇用側からみると、半分の給料で雇えるベテランの労働力が出現するわけだ。タクシーがその活用例で、いまや運転手の多くが、年金をもらいながら乗務している人たちである。団塊世代が自由な労働力として登場し、さらに「“地価社会”が確立されれば、さまざまな分野で、創業者がどっと出てきて、日本経済は一気に活性化する」――このラストチャンスを活かすのは、はたして小泉総理なのか、別の人材なのか、と堺屋氏は結んでいるが、まさにこの数年は、政治経済から価値観の点検まで、日本および日本人にとっては、戦後でもっともおおきなターニング・ポイントであり、正念場のひとつになるにちがいない。



関連論文

筆者の掲載許可が得られない論文はリンクしていません。
96年以前の論文については随時追加していきます。ご了承ください。

私の主張
(2005年)「気がつけば人手不足」の時代が到来――個人消費も回復が持続
河野龍太郎(BNPパリバ証券経済調査部長・チーフエコノミスト)
(2005年)定年帰農のすすめ――団塊世代のふるさと回帰で人も地方も蘇る
立松和平(作家、ふるさと回帰支援センター理事長)
(2005年)豊かな自然、純朴な人情――定年帰農に要注意。甘い幻想は捨てなさい
高橋秀実(ノンフィクションライター)
(2004年)近未来予測・少子高齢社会――突如、団塊ホームレスが団地を占拠、「解放区」を
水木 楊(作家)

議論に勝つ常識
(2005年)[田舎暮らしについての基礎知識]
「定年帰農」の実際とは?
(2004年)[少子化と経済についての基礎知識]
団塊世代の定年退職は経済にどう影響するのか?



バックナンバー


▲上へ

Copyright Bungeishunju Ltd.