北京で行われた第4回6カ国協議は、北朝鮮の核放棄をめぐって難航したが、土壇場で共同声明の採択にこぎつけた。北朝鮮は「すべての核兵器と既存の核計画の放棄」を確約し、見返りに要求した軽水炉供与は「適当な時期に議論する」ことで合意した。長引くとみられていた協議が、米国が北朝鮮の核の平和利用を認めるなど、大幅な譲歩を行うことで一応のかたちをみたのは、米国が北朝鮮の核放棄の検証方法や、核放棄が先かエネルギー支援が先かなど具体論を次回11月の協議に先送りすることで議長国の中国の顔を立てたという背景がある。その意味ではこのところの米中の緊密な関係を印象づけた。
日朝関係については、共同声明6項目のなかに「平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として、国交正常化をするための措置をとることを約束した」との文言が盛り込まれた。拉致被害者家族会など関係者の多くは、拉致問題への明言がなかったため、「棚上げされるのではないか」などの不安や懸念を抱いたが、横田めぐみさんの父親、滋さんはあえて前向きにとらえ、今後の交渉の進展にいちるの望みを託した。
今回の協議では、日朝実務者協議がほぼ連日並行して行われたが、北朝鮮側は、従来の「拉致問題は解決済み」とした姿勢から、「日本の立場はよく理解している。対話へ向けた努力をさらに行いたい」(18日、金柱寛外務次官)と柔軟な態度に変化した。日本としては、共同声明が「懸案事項」と記された中身には当然、拉致問題が含まれると受け止め、拉致問題の解決は日朝二国間だけにとどまらず多国間の課題にされたとの認識を示している。
しかし、そのいっぽうで、小泉首相と金正日総書記の初めての首脳会談が行われてからちょうど3年の9月17日、平壌放送は「日本は6カ国協議の場においてまで拉致問題をうんぬんし、国際的な冷笑と非難を受けた」とコメントするなど、「拉致問題は本質上、すべて解決した」とする立場を崩していない。小此木政夫慶応大教授は、今後の日朝関係について、「日朝関係は大きく動き出す可能性がある。国交正常化が国際的な文書に盛り込まれた意味は大きい。北朝鮮が拉致問題でどれだけ誠意を示せるかが課題だ」と指摘している(読売新聞、9月20日付)。
町村外相は20日夕、緊急記者会見し、日朝両国が政府間対話を再開することで合意したと発表した。昨年11月以来、公式の実務者協議は中断しており、外相は「国交正常化交渉への道が開かれるための必要なステップとしたい」と語った。北朝鮮がこうした態度の変化を見せた背景には、衆院選で自民党が圧勝し、小泉首相の政治基盤が強化されたことがあるとみられ、来年9月までの首相の任期内に関係の打開を図りたいとの思惑がありそうだ。
|
|