郵政民営化法案に反対したため、公認を得られないまま当選してきた造反議員たちは、総選挙で自民党が圧勝したことで、相次いで賛成へと方向転換した。反対派の“ジャンヌダルク”と呼ばれた野田聖子元郵政相は、選挙では無所属で出馬、“刺客”候補のエコノミスト、佐藤ゆかり氏を接戦の末に破ったものの、ついに自民党の軍門に下ることになった。野田氏は、同じく賛成派に転じた古屋圭司氏ら11人とともに、11日の衆院本会議における記名採決で賛成票を投じた。法案はこのため、5票の僅差で可決した7月5日の採決とはうって変わり、200票の大差で可決されて参院へ送付、成立することになった。
野田氏が翻意した背景には、自民党の追い打ちといえるような強硬措置があった。小選挙区支部の解散を通告され、党紀委員会での除名処分をほのめかされた。そうなれば自民党員を名乗ることもできなくなる。現に、武部幹事長は、11日の記者会見で、「公認候補を妨害し、党の規律を乱した点で、厳正な審査がなされる」と強調し、除名を含め、離党勧告、党員資格停止などの処分を行う意向を示した。野田氏がいち早く恭順の意をみせることで寛大な処分を期待したとすれば、あてがはずれたというところだろう。
衆院の造反議員のうち、非公認にされた城内実氏(静岡7区)の場合は、元財務省主計局の官僚で、落下傘候補の片山さつき氏に敗北、選挙後は、野田氏同様、党の締めつけにあい、10日、ついに自民党からの離党を表明した。また、落選しながらも自民党員のまま再起をはかろうとしている藤井孝男氏、さらに総選挙への出馬を見送り、岡山市長選に出馬した熊代昭彦氏は落選するなど、いずれも厳しい試練にさらされている。だが、こうした翻意に対し、政治評論家の森田実氏は、「そんなふうに信念を軽く扱う者は政治家として不適格だ。彼らの変節の理由は自民党に戻りたいという自分個人の欲望のためであって、国家国民のためではない。歴史に恥として記録される」と痛烈に批判している(東京新聞10月12日付)。
これとは対照的に、自民党内は様変わりしつつある。なにしろ、衆院で15年ぶりに単独過半数を回復しただけでなく、絶対安定多数(269議席、17ある常任委員会の委員長ポストを独占し、与党の委員数も全部で過半数を占める)を超え、さらに公明党を加えた与党が3分の2超の327議席を占めることになったからだ。小泉首相のツルの一声で派閥への加入を禁じられた「小泉チルドレン」といわれる83人の新人議員は、党では初めての試みの新人研修に参加した。目下、小泉首相が、国家公務員の定数削減、給与改革、政府系金融機関の統廃合など次の改革課題について矢継ぎ早に指示を連発しているのも、改革の道筋をつけるために求心力を保ちながら、来年9月に有終の美を飾りたい、との強い思いからのようだ。
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