新型インフルエンザのウイルスとは、高い致死性を示す高病原性鳥インフルエンザのウイルス(A型ウイルス、H5N1型)が、偶然、人に感染し、そのウイルスの遺伝子が強い感染力と病原性をもつものに変化(抗原不連続変異)したものだ。このウイルスが出現すると、人から人への感染を大流行させる恐れがある。過去に、1918~20年に大流行し、世界で約4000万人の死者を出したインフルエンザ「スペイン風邪」がある。また、68~69年には「香港風邪」(A香港型)で100万人以上が死亡するなど、10~40年周期で、強力なインフルエンザが発生している。WHO(世界保健機関)は、最悪の場合、世界で7400万人、日本では16万7000人が死亡するとの試算を発表した。
ここ数年、アジアで流行していた鳥インフルエンザは、この秋には欧州にも拡大し、タイやベトナムでは感染して死亡する例が60人を超えた。事態を重視したWHOは、5月、「世界的な大流行(パンデミック)になる可能性が高い」として、スペイン風邪並みに病原性が高い場合、世界で200万人が入院、64万人が死亡する可能性があると警告、各国に新型インフルエンザ行動計画をつくるよう勧告した。これを受けて米国は、国内外の対策に71億ドル(約8300億円)を緊急支出することを表明、日本も10月28日、対策本部を設置し、11月14日には行動計画を発表した。
行動計画は、WHOの示した平常時から世界的大流行までの6段階ごとに、予防、封じ込め、医療など5つのテーマで対応策を提示している。柱は治療薬の備蓄で、抗ウイルス薬「オセルタミビル」(商品名、タミフル)の備蓄目標を、5年後には現行の1.7倍に、1人3日分の投与量を年間2500万人分に増やすことを、06年度達成に前倒しし、量も5日分に増やした。もし大流行になったときは、厚生労働相が非常事態を宣言し、大規模な集会や海外旅行の自粛を勧告、症状の認められる従業員の出勤停止を求めることにした。いっぽう、15日から韓国・釜山で始まったアジア太平洋経済協力会議(APEC)の閣僚会議では、鳥インフルエンザの被害の広がりや拡散の速さなどを考慮して、自然災害と同じ位置づけをし、感染拡大の防止に向けて国際協調で取り組むことで合意した。
第一生命経済研究所が14日に公表した試算によると、新型インフルエンザが大流行した場合、鶏肉・卵の消費が落ち込み、輸出の減少や海外旅行の手控えなどによって個人消費が減り、流行が1年続くと、最大で名目GDP(国内総生産)を0.27%押し下げ、約1兆4000億円縮小させるという。
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