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写真 「新型インフルエンザ行動計画に基づき、政府一丸となって万全の備えと対策を講じていきたい」 (読売新聞11月16日付)
安倍晋三・内閣官房長官

11月16日、鳥インフルエンザの感染拡大と新型インフルエンザの発生に備えるため、厚生労働、農林水産、外務など関係14省庁の閣僚による会合が首相官邸で開かれた。席上、厚生労働省がまとめた新型インフルエンザ行動計画の説明を受け、防止対策に万全の措置をとることを表明した。


 新型インフルエンザのウイルスとは、高い致死性を示す高病原性鳥インフルエンザのウイルス(A型ウイルス、H5N1型)が、偶然、人に感染し、そのウイルスの遺伝子が強い感染力と病原性をもつものに変化(抗原不連続変異)したものだ。このウイルスが出現すると、人から人への感染を大流行させる恐れがある。過去に、1918~20年に大流行し、世界で約4000万人の死者を出したインフルエンザ「スペイン風邪」がある。また、68~69年には「香港風邪」(A香港型)で100万人以上が死亡するなど、10~40年周期で、強力なインフルエンザが発生している。WHO(世界保健機関)は、最悪の場合、世界で7400万人、日本では16万7000人が死亡するとの試算を発表した。

 ここ数年、アジアで流行していた鳥インフルエンザは、この秋には欧州にも拡大し、タイやベトナムでは感染して死亡する例が60人を超えた。事態を重視したWHOは、5月、「世界的な大流行(パンデミック)になる可能性が高い」として、スペイン風邪並みに病原性が高い場合、世界で200万人が入院、64万人が死亡する可能性があると警告、各国に新型インフルエンザ行動計画をつくるよう勧告した。これを受けて米国は、国内外の対策に71億ドル(約8300億円)を緊急支出することを表明、日本も10月28日、対策本部を設置し、11月14日には行動計画を発表した。

 行動計画は、WHOの示した平常時から世界的大流行までの6段階ごとに、予防、封じ込め、医療など5つのテーマで対応策を提示している。柱は治療薬の備蓄で、抗ウイルス薬「オセルタミビル」(商品名、タミフル)の備蓄目標を、5年後には現行の1.7倍に、1人3日分の投与量を年間2500万人分に増やすことを、06年度達成に前倒しし、量も5日分に増やした。もし大流行になったときは、厚生労働相が非常事態を宣言し、大規模な集会や海外旅行の自粛を勧告、症状の認められる従業員の出勤停止を求めることにした。いっぽう、15日から韓国・釜山で始まったアジア太平洋経済協力会議(APEC)の閣僚会議では、鳥インフルエンザの被害の広がりや拡散の速さなどを考慮して、自然災害と同じ位置づけをし、感染拡大の防止に向けて国際協調で取り組むことで合意した。

 第一生命経済研究所が14日に公表した試算によると、新型インフルエンザが大流行した場合、鶏肉・卵の消費が落ち込み、輸出の減少や海外旅行の手控えなどによって個人消費が減り、流行が1年続くと、最大で名目GDP(国内総生産)を0.27%押し下げ、約1兆4000億円縮小させるという。



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