今週の必読・必見
日本を読み解く定番論争
日本の論点PLUS
日本の論点PLUSとは?本サイトの読み方
議論に勝つ常識一覧
執筆者検索 重要語検索 フリーワード検索 検索の使い方へ
HOME 政治 外交・安全保障 経済・景気 行政・地方自治 科学・環境 医療・福祉 法律・人権 教育 社会・スポーツ
この人の重大発言

写真 「耐震強度偽装問題を抜本的に解決するには、実際に何が行われたのかを正確に把握しなくてはならない。刑事事件として取り上げられるものがあれば、厳正に処罰していく」 (読売新聞12月20日付)
沓掛哲男・国家公安委員長

12月20日、閣議後の記者会見で、警視庁、神奈川、千葉両県警本部の合同捜査本部が、建築基準法違反容疑で姉歯秀次元一級建築士の自宅兼事務所など関係先の一斉家宅捜索を開始したことについて見解を示した。


 マンションやホテルの耐震強度構造計算書が偽装されるという前代未聞の事件は、20日の一斉家宅捜索の着手によって、本格的に捜査のメスが入ることになった。捜査員約520人が投入された家宅捜索は、偽装物件に関与した20社以上の事務所や幹部の自宅など6都県、117カ所に及ぶ大規模なものとなった。なかでも、24件の偽装ホテルの開業指導にタッチしたコンサルタント会社「総合経営研究所(総研)」(東京都千代田区)グループと、工事を担当した「木村建設」(熊本県八代市、破産)の捜索を重点的に行った。

 国土交通省が建築基準法20条違反(建築物は、地震その他の震動および衝撃に対して安全な構造のものとして、政令で定める基準に従った構造計算によって確かめられる安全性を有すること。罰金50万円以下)で刑事告発した(12月5日)対象物件は、2003年2月〜04年6月にかけて建築確認された東京都内のマンション3棟とホテル1棟の4物件。いずれも耐震強度を基準の26〜33%に低減した建物で、震度5強の地震で倒壊する恐れのあるものだ。

 合同捜査本部は、この日の捜索で押収した大量の関係資料を分析し、合わせて姉歯氏ら関係者からの事情聴取、偽装物件の現場検証などを行い、告発容疑に加えて、偽装の事実を告げずにマンションを販売した宅地建物取引業法違反や、偽装を事前に認識してマンションやホテルを建設、販売したとする詐欺容疑についても立件したいとしている。

 今後、耐震強度偽装事件の捜査の焦点は、姉歯氏が不正を働くことになった動機、証人喚問で証言(14日)のあった木村建設による圧力の有無や、経済設計という名目のコストダウンの実態、マンション建築主の「ヒューザー」(東京都千代田区)や総研、木村建設の下請け、平成設計などの関係者が事前に不正を認識していたかどうかの解明に移る。いっぽう、捜査を通じて、自治体や民間の指定確認検査機関(日本ERI、イーホームズ)が偽装を見落とした経緯が明らかとなり、国土交通省は、現行建築基準法の抜本的な見直しを迫られることになった。

 今回の捜査の意義と見通しについて、欠陥住宅問題に詳しい吉岡和弘弁護士は、「これほど大規模な強制捜査となった今回は、事件の特殊性から捜査側に専門性が問われ、ときには難航も予想されるだろうが、建築業界の根深い問題に切り込む大切な捜査だ。被害者や庶民感情に沿えば、命を脅かす建物を故意に建設し引き渡したのだから『未必の故意』に相当し、殺人未遂罪で問うてもいいほどだと思う」と語っている(東京新聞12月20日)。



バックナンバー


▲上へ

Copyright Bungeishunju Ltd.