2005年の人口動態統計の年間推計によると、出生数は106万7000人(前年比4万4000人減)、死亡数は107万7000人(同4万8000人増)で、死亡数が1万人上回り、1899年の統計開始以来初めて日本の人口が自然減に転じた。国立社会保障・人口問題研究所は、07年からの人口減少を予測していたが、2年早まった。人口動態統計とは、日本に住む日本人の出生数、死亡数を算出したもので、今年1〜10月の実績値に、11、12月分の予測値を加えて算出している。
いっぽう、12月27日に閣議報告された2005年国勢調査の人口速報値では、日本の総人口は1億2775万6815人で、04年10月1日時点より約1万9000人減少している(国勢調査の場合は、日本に3カ月以上住む外国人も含む)。
厚生労働省によると、死亡数の増加は、今年前半にインフルエンザが流行して高齢者の死亡が増えたことが直接の原因だとしているが、出生数が5年連続で減少し、05年は過去最低を更新したのが大きい。2000年の出生数が119万547人(確定値)だったから、5年で1割以上減少したことになる。戦後の49年に269万6000人とピークを記録したときと比べると60%の減少だ。
人口減少がもたらす影響は、労働力不足や、経済活動の停滞にとどまらず、高齢者を支える現役世代が減るため、年金、医療などの制度設計が困難になる。このため、政府は、90年以降、少子化対策に本腰を入れ始め、これまでに「エンゼルプラン」、次いで「新エンゼルプラン」を策定したが、今年度は「子ども子育て支援プラン」を打ち出した。猪口少子化担当相は、冒頭の発言に続き、「育児休業制度を取得しやすい環境整備など、仕事と育児の両立」や「子育て世代に対する経済支援」などを重点対策として挙げた。
人口減社会の到来について、阿藤誠早稲田大学特任教授(人口学)は、「歴史的な出来事がついに来たか、という感じだ。今後、出生率が上がっても、少なくとも50年間は人口が落ち込む傾向は動かない。21世紀は人口減少の世紀と位置づけられるだろう」との見通しを示している(読売新聞12月23日付)。また、大日向雅美恵泉女学園大学教授(発達心理学)は、出生率を上げるためには、「子育てのコストをいかに減らせるか。教育費など直接の支出だけでなく、女性にとって育児休業で所得が減るなど逸失利益を少なくするよう、企業が働きやすい環境を整えること。子どもを安心して預けられる保育所の整備も最優先の課題だ」と指摘する(東京新聞12月22日付)。
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