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議論に勝つ常識
2005年版
[中国経済についての基礎知識]
成長率九%超。中国経済の実力をどう見るか?


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今や世界経済の牽引役
 中国経済の過熱傾向が大きな関心を集めている。中国経済は一九九七年のアジア通貨危機以降、停滞を続けていたが、二〇〇二年で成長率低下に歯止めがかかり、〇三年は実質国内総生産(GDP)伸び率九・一%を達成、世界経済を牽引している。その勢いは〇四年も続いており、一―三月のGDP伸び率は九・七%にも達している。
 これまで中国は低コストの生産拠点として日米欧の企業が大挙して進出、「世界の工場」と呼ばれ、各国における産業空洞化の元凶とされてきた。また、低価格品の輸出攻勢で世界市場を席巻、「デフレ輸出国」とも言われてきた。しかしそうした見方は〇三年あたりからなりを潜めている。中国が巨大な消費市場としての一面を見せ始めたからだ。上海、天津、深センなど沿海部の主要都市では、住宅ブームが起こり、また、携帯電話や乗用車などの売上げも大幅に伸び、消費は爆発的に拡大している。加えて、鋼材は世界の三〇%以上、セメントは五〇%以上を消費するといった「爆食」ぶりで、原材料の国際商品市況を押し上げるまでになっている。
 世界貿易機関(WTO)の貿易統計によれば〇三年の中国のモノの輸入額は前年比四〇%増で世界三位、輸出額も同三五%増で世界四位、貿易総額は三位の日本に肉薄し、〇四年中にも追い抜く気配である(図表参照)。
 この恩恵を受けたのが日本だ。日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査によれば、〇三年の日本の対中国輸出は五七二億ドルと前年比で四三・六%も増加している。AV(音響映像)機器部品や自動車部品などは二倍以上の伸びで、対中輸出の増加分は、日本の総輸出増加分の実に七割を占めている。
 いわゆる「中国特需」は〇四年に入っても続いており、日本の対中輸出は上半期(一―六月)だけで四四八億ドルに達している。一方、対中輸入は四三七億ドルで、対中貿易収支は一一年ぶりに黒字転換した。この間の鉄鋼、プラスチック、建設機械などの輸出がデフレに呻吟していた日本経済に立ち直りのきっかけを与えたことは間違いない。それだけに、中国経済の今後の動向は、日本の企業にとって大いに気にかかるところである。


中国バブル経済論
 では、中国経済は今後も高成長を維持できるのだろうか。野村資本市場研究所の関志雄主任研究員は、次のように予測する。〈不動産などの資産価格も上がり、一九八〇年代後半の日本にも似たバブルが生じている。特に固定資産投資は一―三月期に前年同期比で四三%も増えている。多くの日本の経営者が持っている「二〇〇八年の北京五輪まで年九%の成長が続くだろう」という考え方は間違っている。一度も調整局面がないとは考えられない。最悪の場合は九〇年代の日本のバブル崩壊のような事態もあり得る〉(日本経済新聞〇四年六月三日付)。
 固定資産投資とは政府の公共事業や官民の不動産建設投資である。対前年比伸び率で見ても二〇〇〇年の一〇・三%が〇三年は二六・七%にまで急伸している。GDP成長率をはるかに上回る活発な不動産投資は、北京五輪とその二年後に予定されている上海万国博覧会に向け、高速道路建設などのインフラ整備が急ピッチで進められ、同時に上海、北京などの主要都市部で建設ラッシュが続いているからだ。丸紅経済研究所の調べでは、中国の不動産業者による分譲住宅の販売面積は〇一年には一万九九三九平方メートルと一〇年間で七倍に増え、住宅建設コストも二・五倍に急騰している。また、毎日のように古い街区が取り壊され、高層マンションやオフィスビルに建て替わる陰では、地上げ屋も暗躍しているという。さらに九四年から個人住宅ローンが認められた銀行も、融資基準を甘くして(年収七〇万円で一〇〇〇万円を融資)、積極的な融資を行ってきた。中国人民銀行(中央銀行)によれば、中国国内商業銀行の不動産関連貸し出しは九八―〇二年の四年間で四・八倍に急増している。たしかにバブル期の日本と酷似した状況である。 
 こうした状況に対して、香港駐在の重並朋生みずほ総研上席主任研究員は、「今後も住宅市場の過熱にブレーキが掛からず、将来バブルが弾けた場合には、不動産ディベロッパー向け貸し出しが不良債権化する危険もある」(読売新聞〇四年二月二三日付)と警鐘を鳴らしている。


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論 点 中国経済は失速するか 2005年版

私の主張
巨象・中国を失業者の大群が襲う――ハードクラッシュの可能性も
渡辺利夫(拓殖大学国際開発学部教授)
中国バブルは抑制できる――内需拡大で北京五輪までは高度成長が続く
沈 才彬(三井物産戦略研究所中国経済センター長)


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