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議論に勝つ常識
2005年版
[定年延長についての基礎知識]
六五歳定年制は日本社会に定着するか?


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改正高齢者雇用安定法の意義
 二〇〇四年六月、改正高齢者雇用安定法が成立した。従来、定年は「六〇歳以上」とされ、六五歳までの雇用は企業の「努力義務」だったが、これが「義務」に変わる。企業は定年を六五歳に引き上げるか、継続雇用制度を導入するか、あるいは定年制そのものを撤廃するかの選択を迫られることになる。まず〇六年度に六二歳まで引き上げられ、以後一三年度までに段階的に引き上げられる仕組みだ。
 こうした改正が行われる最大の理由は、厚生年金の支給開始年齢が段階的に六五歳まで引き上げられることにある。それ以前に定年を迎えたとすると、年金の支給までに無収入の期間が生じてしまう。そこで、支給開始年齢と雇用年齢を連動させることで、この空白を埋めようとしているのである。
 加えて、少子高齢化に備えるという意味もある。国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計によれば、日本の生産年齢人口(一五〜六四歳)は〇四年が八五〇〇万人であるのに対し、一五年には七七三〇万人になるという(中位推計)。とくに〇七年度以降は、総人口の五%を占める団塊の世代が一斉に定年を迎える。その労働力の減少を、雇用延長によって補おうというわけだ。
 同法の原則は希望者全員の雇用だが、企業ごとに独自の労使協定が成立すれば、企業側が対象者を選ぶことができる。また協定が不調に終わった場合でも、大企業なら三年間、中小企業なら五年間は、経営者側の判断で雇用基準をつくることができる。いずれも、制度改正による激変を緩和するための措置だ。


現状の高齢者雇用は限定的
 もっとも、すでに定年後も働ける制度を導入している企業は少なくない。独立行政法人「高齢・障害者雇用支援機構」が〇二年に行った「企業の高齢化諸施策の実態に関する調査研究」によると、七割強の企業が継続雇用制度を設け、その八割は定年退職後に再雇用する方式を採用しているという。
 また、継続雇用制度を導入している理由(複数回答)としては、「その人の技能や知識・経験などを活用できるから」が九一%と圧倒的に多く、以下「比較的安い賃金で活用できるから」(五〇%)、「高齢者の雇用は社会的潮流だから」(二八%)、「従業員からの要望が強いから」(二五%)などと続く。あるいは「若手・中堅層を採用できないから」(一〇%)という理由もある。福利厚生的な意味合いより、戦力として積極的に雇用している姿がうかがえる。
 ただし、希望者全員を継続雇用している企業は三割弱に過ぎない。定年退職者の中には、再雇用の希望が叶わなかった人々が少なからず存在するわけだ。〇四年版「高齢社会白書」によると、六〇〜六四歳男性の未就業率は三三・五%。そのうち五割以上が就業を希望しているという。だが、この年代の有効求人倍率はわずかに〇・一九%に過ぎず、再就職への道はきわめて厳しい。この状況が続けば、今後、年金受給年齢の引き上げに伴って無収入の高齢者が急増することになる。


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論 点 定年を延長すべきか 2005年版

私の主張
能力ある高齢者にもっと仕事を。年齢差別禁止法が日本を救う
和田秀樹(精神科医)
老害が日本をダメにする――世代交代こそが最大の雇用対策だ
荒谷紘毅(東京商工リサーチ情報事業統轄本部取締役本部長)


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