現在、全国の市町村の数は3187。そのうち約4割が合併に向けての法定協議会を設置しており、研究会程度のものを含めれば、合併を検討している市町村は全体の8割に及ぶ。4月の統一地方選挙でも、合併の是非や、どこと合併するかが争点になった自治体が多かった。たとえば、小学校の校舎保存問題で町長がリコールされた滋賀県豊郷町の出直し町長選では、結局、前町長が返り咲いたが、背景には合併問題があった。前代未聞の「母娘対決」となった広島県湯来町の町長選では、合併推進派の母親側が圧勝した。
わが国は「明治の大合併」「昭和の大合併」と、ほぼ50年ごとに大規模な市町村合併を行ってきたが、今回は「平成の大合併」と呼ばれるほどの大きなものだ。総務省は市町村の数を2005年までに3分の1程度まで減らしたいとしている。
では、いまなぜ合併なのか。理由の第一は行政の合理化である。職員や議員の数が大幅に減らせるし、事業の規模が大きくなれば、行政効率がよくなるというわけだ。小規模自治体に手厚い地方交付税の仕組みが国の財政を圧迫してきたことへの反省から、「小規模であるほど不利」というシステムに変えようとしている、といえる。
合併の動きを促進するため、総務省は「合併特例債」を用意した。2005年3月末までに合併すれば、発行額の3分の2を国が地方交付税で補填し、自治体は3分の1だけを負担すればよいという有利な起債を許したのだ。
こうしたアメとムチの総務省の方針に、反旗をひるがえす自治体もないではない。国の水準以上の住民サービスを提供してきた市町村が、合併によって従来どおりのサービスを提供できなくなることがあるからだ。
福島県の矢祭町は、2001年10月の町議会で「合併しない宣言」を可決した。独立した自治体であれば、過疎は過疎なりに地域に密着した住民サービスができるが、合併してしまえば、単なる「過疎地域」として見捨てられ、ますます過疎化する、というのがその理由である。
国が特例債を使って合併の動きを進めるやり方にも、批判が多い。結局、総務省が目標としている市町村の数「1000」は達成されず、最終的には2000程度になるのではないかと見られている。そのあと、小規模自治体がどのような「不利」な立場に置かれるのか――総務省と市町村の攻防はますます激しくなっている。
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