6月3日、「心神喪失者等医療観察法案」が参議院法務委員会で強行採決され、6日に参院本会議を通過した。昨年12月の衆院法務委員会も同様だったが、野党の強い反対のなか、2度目の強行採決となった。参院で一部修正されたため、法案は一度衆院に戻されるが、今国会で成立の見通し。
この法案上程のきっかけは、佐賀県の精神病院に入院していた少年が外泊中に引き起こしたバスジャック事件(2000年5月)であった。精神病院の対応が事件の発生を招いたとして、精神障害者の犯罪をどうやって防止するかが、にわかに注目を浴びた。これに拍車をかけたのが翌年6月の池田小事件だった。
この法案は、重大な犯罪をおかしながら、心神喪失または心神耗弱のために不起訴や無罪になった人について、裁判官が関与して強制入院などの決定を行う、と定めている。従来は医師だけが判断していた入退院の決定に、司法を介入させようというのがポイントだ。精神障害者の団体や日弁連は、これに強硬に反対しつづけてきた。医療の貧困が改善されないまま司法を関与させれば、本来は拘禁する必要のない患者まで予防的に拘禁することになるという危惧があるからだ。
日本の精神科の病床数は33万床。先進国としては異例に多い。地域に受け入れ場所がないため病院に収容されている、いわゆる「社会的入院」の多さは、そのまま日本の精神障害者の置かれている立場をあらわしている。
精神障害者の犯罪は医療の貧困から起こるものであって、司法の問題ではない、というのが反対派の主張だ。しかし、いくつもの凶悪な事件が、法案成立への追い風になった。
両者の深刻な対立は、重要語検索のなかの「精神医療」でヒットするが、下記の論文と基礎知識にくわしい。野田正彰氏の論文はバスジャック事件のあとに、神氏と小田氏の対論は池田小事件のあとに書かれたものである。
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