国際捕鯨委員会(IWC)のベルリン総会(6月16日)において、「鯨類保存委員会」の設置が、賛成25、反対20の多数決で決まった。調査捕鯨による生態調査を行うことで、これまで一貫して「保護と利用の両立は可能」とデータを示して反捕鯨国へ働きかけてきた日本は、一段と苦しい立場に追い込まれた。水産庁はじめ関係者の間では、失望のあまりIWCからの脱退や、約2000万円の分担金支払いを拒否すべきだとの強硬な意見が出始めた。
クジラ問題は、いまや環境保護のシンボルと化したきらいがある。だが、そもそもIWCは「鯨類の適当な保存を図って鯨類産業の秩序ある発展を可能にする」という国際捕鯨取締条約(1946年)から出発したのであって、設置当時(1948年)は決して保護一辺倒ではなかった。反捕鯨国が増えはじめたのは、欧州を中心に環境保護運動が高まりだした70年代以降で、その後、商業捕鯨の禁止(82年)、南氷洋鯨類サンクチュアリの設定(94年)、と捕鯨国の活動は制約されていった。
日本鯨類研究所の試算によると、クジラが捕食するサンマやイワシなどの海洋生物は、年間2.5億トンから4.4億トンに及び、全人類が1年間に海から漁獲する魚の3倍から5倍の量という。国連食糧農業機関(FAO)は、このままクジラを放置しておくと、こうした大量の捕食により海洋生態系が変化し、肝心のクジラが絶滅する恐れさえあると主張している。このため、日本やノルウェーなどの捕鯨国は、商業捕鯨の再開に道を開くため「持続的利用」を今後も主張していく方針だ。捕鯨をめぐる日本政府の立場は、下記の論文に詳しい。
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