1834年、英国のピール首相が、タムワース選挙区の人に「タムワース・マニフェスト(声明書)」を送り、それが翌年の総選挙で保守党の基本方針に採用されたのがその起源。マニフェストとは、選挙前に政党や候補者が有権者に示す、数値、期限、財源が明示された具体的な政策の実行プランのことだ。税源移譲、補助金の削減、地方交付税の見直しといった地方分権についての具体論が議論されるなか、政治を変えるキーワードとしてにわかに注目されてきた。
岩手県の増田寛也知事は、「2年間で公共事業費を200億円減らし、1万5千人の雇用を創出する」といったマニフェストを発表し、今春の知事選で3期目の当選を果たした。同様に神奈川、鳥取の各知事らもこれを作成、これまでのような抽象的な公約とは一線を画すことで、いっきに認知度が高まった。
三重県の改革派知事としてマニフェストづくりを提案してきた北川正恭・早稲田大学教授は、「官僚に群がる政治から、官僚を主導する政治へ変える道具になる。定着すれば、政党政治は一新されるだろう」と、その効果を強調した。経済・労働界の有志や学識者で組織する「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調・代表=佐々木毅東大学長ら4人)は、6月18日、マニフェストを掲げて選挙を行うことが政党政治を再建する突破口になるとして、推進運動をスタートさせ、「脱無党派」、「脱官僚」、「脱中央集権」の3つの「脱」を提唱した。
ただし、総務省は、特定の選挙に向けたマニフェストの配布は、告示前は事前運動になり、告示後は法定ビラでないため、公職選挙法違反になるとの立場だ。このため民主党は6月24日、各党に法改正を呼びかけた。自民党でも検討を始めた。また、当然のことだが、マニフェストの実効をあげるためには、実行状況を有権者が厳しく監視しなければならない。マニフェストへの理解を深めるためには、下記の論文と基礎知識が参考になる。
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