6月14日、大阪府八尾市で、ヤミ金融業者の過酷な借金取り立てを苦にした老夫婦ら3人が電車に飛び込み自殺し、改めて悪質なヤミ金融への批判が高まった。
ヤミ金融とは、国や都道府県に登録していない貸金業者と、出資法の上限金利(29.2%)を超えた違法な金利を取る貸金業者による貸し付けをいう。具体的には、(1)10日で1割の高金利を取る通称「トイチ」、(2)大量の業者が殺到するため登録審査が手薄になりがちな東京都知事の登録を取得し、違法な貸し付けを行っている「新トイチ(都1)」、(3)無登録の業者で、電柱やガードレールなどに携帯電話の番号だけを広告、貸し付けや返済は口座振り込みに限定する、いわゆる「090金融」の3つのタイプに分けられる。大阪のケースは、「090金融」による「追い込み」と呼ばれる脅迫めいた取り立てが原因だった。
ヤミ金融のおもな客は、複数の貸金業者から借金を重ねた多重債務者だ。当面の返済は金利分だけとするやり方で手軽に融資し、返済額を膨らませ、さらに別のヤミ金融に手を出させて借金地獄に陥らせる。その手口には、勝手に口座にカネを振り込み、法外な利息を請求する「押し貸し」や、カネを貸していないのに弔電を送りつけて脅し、「こっちにも借金がある」と勘違いさせて返済を迫る「カラ貸し」がある。「全国ヤミ金融対策会議」は、2002年9月に2000社、同12月に3000社、2003年5月に5000社のヤミ金融業者合計1万社を出資法違反、貸金業規制法違反で告発した。
こうしたヤミ金融に対し、警視庁はすでに今年1月に特別捜査本部、大阪府警も7月1日に特別取締本部を設置、専従の捜査員を配置して取り締まり強化に乗り出した。しかし、2002年度の実績は、逮捕者320人、このうち起訴されたのは185人、一審判決で有罪は125人、実刑は12人だ。これでは抑止力にならないため、ヤミ金融に対する厳罰化が検討されていた。7月1日、与野党が合意した法改正のおもな内容は、無登録業者への刑事罰は懲役最長5年、罰金最高1000万円(法人1億円)、登録業者の違法貸付への懲役も5年、罰金も1000万円(法人3000万円)に引き上げ、上限金利109.5%を超えた場合は利息部分の契約を無効とする、など。今国会で成立させ、罰則は成立後1カ月をメドに前倒し実施することになった。
「全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会」や日本弁護士連合会などによると、ヤミ金融の被害者は約12万人で、実際には100万人を超えているとみられる。また、サラ金利用者は1600万人、クレジットカード発行枚数は2億枚、自己破産者は20万人を数え、ヤミ金融の被害者予備軍は1000万人以上と推定している。一方、貸金業者が債権を暴力団に譲渡するため、暴力団の資金源となっている実態もある。当面は、被害者を増やす原因となっている多重債務者のリストの売買をなくす必要があるが、それ以前に、借金に対する感覚の麻痺をなくすことが先決だ。
下記の論文は、商工ローンが問題になっていた99年のもの。裏社会を知り尽くした筆者の借金哲学は瞠目に値する。
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