6月27日、政府は、「国益」を基本理念にしたODA大綱見直しの原案を、自民党に10年ぶりに提案した。
ODAは、軍事的な国際貢献ができない日本にとって、外交の重要な柱の1つだが、これまで外務省のOBでさえ「気前のよい散布」と自嘲するほど、見返りを考えないばらまき型の供与という批判がつきまとってきた。日本のODA実績は、1964年に初めて1億ドルを超え、91年に100億ドルを突破した。1991年から2000年までは米国をしのぐ世界第一位、2位になった2002年でも92億ドル(1兆1500億円)の巨額の供与額を維持している。
今回の見直しは、1992年に閣議決定した現大綱の(1)環境と開発を両立させる(2)軍事的用途や国際紛争の助長を回避する(3)軍事支出、大量破壊兵器の開発・製造、武器の輸出などに注意する(4)民主化の促進、市場経済への努力、人権・自由に配慮する――という4原則を踏まえつつ、「人道援助」から「国益に沿う援助」への考え方を重視したものだ。
ODAの原資は、国民の税金と郵便貯金や簡易保険など財政投融資資金。財政難の中でODA予算が効率的に使われ、その透明性に疑念を受けないようにとの配慮が見直しの背景にある。ODAには有償、無償の資金協力、技術協力、国際緊急援助、国際機関を通じた援助の5つがあるが、半分は円借款と呼ばれる低利子付きの有償援助だ。しかし昨年末、返済能力を失ったミャンマーなど32の重債務国、計9000億円の債権を放棄したほどで、近年、不良債権化が著しい。
とりわけ問題視されているのは、ODAの外交の道具としての効果が十分に発揮されていない点だ。4月の国連人権委員会で採択された北朝鮮非難決議に対し、反対した10カ国の大半がわが国のODA供与国だった。このため、原案では、初めて「わが国の安全と繁栄の確保、国民の利益の増進」を明記した。また、事前に相手国と政策協議を活発に行うことで“ばらまき”と批判された「要請主義」を見直すほか、飢餓、麻薬、エイズなど地球規模の「人間の安全保障」を新たに加える。ただ、核兵器を保有する軍事大国でもあり、年7%の成長を続けている中国へのODAを今後も続けるのか、さらに「ひもつき援助」と非難される供与資金のわが国への還流をどうするのかなど、8月下旬の決定までに詰めた議論が待たれるところだ。ODAについては下記の論文が参考になる。
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