7月18日、埼玉県の土屋義彦知事が、政治資金規正法違反で逮捕された長女の事件の責任をとって辞職した。また、同じ日、昨年3月に秘書給与不正受給疑惑で議員辞職した辻元清美・前社民党政審会長も、詐欺容疑で警視庁に逮捕された。
政治資金規正法は、第1条(目的)で「政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われ、政治活動の公明と公正を確保し、民主政治の健全な発達に寄与する」と明記されている。基本理念(第2条)には、政治資金は「民主政治の健全な発達を希求して拠出される国民の浄財」と定義づけられており、(1)自由な調達、(2)収支の公開、(3)量的な制限――がポイントで、違反に対しては、3年〜5年の禁固刑と50万〜100万円の罰金が科せられる。
土屋前知事の場合は、自身が代表者である政治資金管理団体を任せていた長女が、収支報告書に虚偽の記載をした(24条違反)ことによる責任が追及されている。辻元容疑者は、年間150万円の上限を超える献金を隠し(25条違反)、虚偽記載していたが、すでに3年の時効が過ぎており、それとは別に勤務実態のない政策秘書を名義貸しさせ、公金である給与を私的に流用したことで詐欺罪に問われた。
同法違反や詐欺罪で逮捕,起訴された国会議員には、過去に1998年11月、中島洋次郎(自民党、上告中に自殺)、2000年9月、山本譲司(民主党、1審で1年6月、服役済み)、2003年4月、坂井隆憲(自民党、公判中)――らがいる。このほか鈴木宗男(自民党、受託収賄など)は現在拘置中。昨年では秘書による不正献金疑惑で自民党の加藤紘一、田中真紀子、井上裕の各氏が議員辞職した。
1948年7月に施行された政治資金規正法だが、「政治とカネ」にまつわる不祥事は後を絶たず、政治不信を助長してきた。このため、制限や罰則を強化する改正がこれまで14回行われた。主要な改正は、1975年に、企業・団体献金の総量規制(資本金、組合員数に応じて年間750万円〜1億円を上限)、収支公開の強化(政党は上限1万円超、政治団体は同100万円超)。次いで1994年に、政治家個人の受け皿である資金管理団体は1つに限定し、企業・団体の献金は禁止(施行は2000年)、収支公開は年間5万円超(施行は1995年)、政治資金パーティーは20万円超、 量的制限は年間150万円を上限とする――とした。
しかし、資金管理団体とは別に政党支部の名で受け皿を作るのは許されていて、これを利用した「迂回献金」や、名指しで政党を経由させて献金する「ひも付き献金」といった抜け穴があり、私的な流用などをチェックする監督、審査機関もなく、透明度の低さは相変わらずだ。それでも与党3党は、今国会に同法の改正案を提出している。複数の受け皿になっていると批判されている政党支部にも上限150万円の規制を加え、収支公開の上限を年間24万円にゆるめようとするものだ。一方、すでに政党に国民1人あたり250円を拠出する「政党助成法」(1995年1月施行)があるが、日本経団連は、政策の実行を促すため、1993年9月に中止した企業献金のあっせんを来年から再開する予定で、二重取りの批判もわいている。
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