犯罪の予防や抑止に効果がある、と街頭に監視カメラを設置する動きが全国的に広がっている。7月9日、長崎市の児童誘拐殺人事件で補導された12歳の中学1年生を割り出すきっかけになったのは商店街に設置された街頭防犯カメラだった。また同月24日、東京・渋谷区で起きた連続通り魔事件の容疑者の映像を記録したのもコンビニの監視カメラだ。
監視カメラを積極的に取り入れ、「治安の再生」に活かそうとしているのは、東京都の石原慎太郎知事だ。警察官僚(前広島県警本部長)を副知事に起用、「緊急治安対策本部」の本部長に据え、8月1日から活動をスタートさせた。対策の重点の1つが監視カメラの拡充である。東京都は、今年度から商店街が監視カメラを設置する場合には費用の一部を補助することにしており、すでに浅草や上野の繁華街を持つ台東区が申請している。
警視庁は昨年2月27日、犯罪多発地域の新宿・歌舞伎町1、2丁目の600メートル四方に50台の監視カメラを設置した。その犯罪抑止効果は、昨年3月から今年までの1年間でひったくりや置き引きなどの路上犯罪が前年比13%減少したことでわかった。警視庁は今年度、渋谷区宇田川町、豊島区西池袋1丁目にもこの「街頭防犯カメラシステム」を導入する予定。24時間、常時モニター、録画され、警視庁と所轄署に伝送されるのが特徴だ。
監視カメラで先駆的といわれているのは、警察庁が運用している「自動ナンバー読み取りシステム」(Nシステム)だ。全国約700ヵ所に設置された監視カメラが車のフロントナンバーを無差別に撮影、プレートの文字情報が車両の形状、色別などの情報とともにデータ化され、専用回線で中央のホストコンピュータに伝送されるもので、これまで盗難車両や犯罪車両の照会に成果をあげてきた。
目下、注目されているのが、昨年3月26日から愛知県春日井市など全国10カ所で開始している「スーパー防犯灯」といわれる「街頭緊急通報システム」。人通りの少ない街路や公園の周辺に19基1セットで設置、犯罪に遭遇したとき被害者や目撃者が柱のボタンを押すと赤色灯が点滅して周囲に異常を知らせる。インターホンとカメラが稼動、録画や警察への通報ができる仕組みになっている。
読売新聞が2月に実施した治安に関する全国世論調査によると、犯罪防止のため繁華街や商店街に防犯カメラを設置することについて88%が容認しており、監視カメラへの理解が深まっている。しかし、こうした監視カメラに対し、憲法で保障された基本的人権=プライバシーの保護に反するという意見や、一方では肖像権の侵害を指摘する声がある。東京・杉並区はこうした点を配慮し、自治体としては初めて独自のルールづくりに取り組み始めた。
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