8月下旬、北京で北朝鮮の核開発問題をめぐる初の多国間協議が行われることになった。米国、中国、北朝鮮に加え、日本、ロシア、韓国も参加する6カ国協議で、「北朝鮮の核は国際社会の安全と安定にとって重大な脅威」と無条件の廃棄をせまる米国や、拉致問題を議題に上げようとする日本に対し、北朝鮮がどう対応するかが注目されている。
核問題について北朝鮮は、米朝の2国間交渉にこだわってきた。7月11日、1994年10月の米朝枠組み合意を破り、黒鉛減速炉を再稼動、兵器級プルトニウムの量産につながる核燃料棒の再処理をしたのを米政府が非公式に確認したことから、局面は大きく変わることになった。それまで米中朝の3カ国協議で「核兵器の保有」を伝える(4月24日)一方で、金正日体制の保障を含む援助の約束を取り付けようとしていた。しかし米国はこれを無視して国際包囲網を強化、軍事面を含めた制裁措置をちらつかせるなど強硬な姿勢を貫いてきた。このため追い込まれた北朝鮮は中国、さらにロシアの強い要請を受け入れるかたちで多国間協議に応じることになったものだ。
核爆弾には、北朝鮮が開発してきたプルトニウム型と、ウラン型がある。広島に投下されたのがウラン型で、長崎ではプルトニウム型が使われた。寧辺では黒鉛減速炉(5000キロワット)でウランを棒状にした燃料棒を核分裂させ、使用済み核燃料棒を冷却した後、再処理施設でプルトニウムを抽出しているといわれている。1個の核爆弾には約6キログラムのプルトニウム、約8トンの核燃料棒が必要だ。寧辺にはほかに5万キロワット、泰川に20万キロワットの原子炉があり、米中央情報局(CIA)はフル稼働すると2010年には45個の核爆弾を保有すると予測している。ただ、そのためには高性能爆薬を使った球状のプルトニウムを圧縮するための核実験が必要で、まだ行われた形跡はない。これに対し、ウラン型核爆弾はその必要がなく、より簡単に製造できるといわれる。昨年10月、北朝鮮はこの濃縮ウランによる核開発を認めたが、まだ確認はできていない。
核爆弾が小型化されミサイルに搭載できるようになれば、大量破壊兵器の拡散が現実化するわけだが、専門家によれば、北朝鮮が旧ソ連から受け継いだ技術に加え、パキスタンなどから最新の技術を導入したことを考えると、プルトニウム2.5キログラム程度で1000キログラムの核爆弾小型化は可能だとみている。米国は「すべての核兵器開発が検証可能かつ不可逆的なかたちで放棄されるべきだ」との立場を譲らず、6カ国協議の場が時間稼ぎに利用されないよう早期決着を目指す方針だ。これに対し、8月9日、北朝鮮は労働党機関紙「労働新聞」を通じて、「今回の協議を契機に米国は『対話と圧力』という二重の立場を取り下げるべきだ。もし政策転換の勇断を下さないなら、核問題は膠着状態から抜け出せなくなろう」と早くも牽制を始めている。
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