8月26日、小泉首相は、高橋はるみ北海道知事が昨年11月にまとめた北海道を道州制の「モデル特区」とする計画への支持を求めたことについて、前向きに検討する方針を表明した。これを受けて自民党の政権公約(マニフェスト)に盛り込む案も浮上した。
道州制とは、現在の都道府県を廃止し、九州、東北などブロックごとの広域的な枠組みに再編するもので、人員削減などによりむだな行政コストを減らすというメリットがある。国の役割は外交、安全保障に限定、その他は道や州に委ねる分権に伴う広域行政構想だ。もともと国から権限や財源を移し、中央集権型行政にかわる地方分権型行政を推進する有効な手段として考えられていたものだが、以下のような経緯をたどった。
1957年、「第四次地方制度調査会」は、全国を7〜9のブロック制の地方に分け、官選の地方長官を配する「地方制」構想を打ち出した。これをきっかけに財界や全国市長会、全国町村会が相次いで「道州制」構想を発表したが、60年代の経済成長期に入ると論議は影をひそめ、70年代以降は、政府が「首都圏整備法」などによって逆に中央集権的な広域行政を展開した。しかし90年代に入り地方分権論議がふたたび高まってきた。というのもバブル崩壊以後の景気の停滞に伴って、国と地方の財源が逼迫し、徹底した行政のスリム化や経費の削減、合理化が不可欠の課題となってきたからである。
民主党はいち早く2000年6月の衆院選の公約に全国を10程度の州と1000の市に再編する道州制の採用を取り入れ、ことしの統一地方選でも政権獲得後10年をメドに全国を10〜12の道州に再編する方針を打ち出した。前述の首相発言もこうした野党が先行するかたちの論議を念頭に、自身が推進している「三位一体の改革」(税源移譲、補助金と交付金の削減)、「構造改革特区」と関連させて道州制に積極的な姿勢をみせる狙いがあったようだ。
北海道の道州制モデル特区は、国が予算の使途を定める「個所付け」を廃止し、一括交付した補助金を事業計画内で主体的に使える「統合補助金」を導入することや、道内にある開発局など国の出先機関を整理・統合し一元化する――などが主な内容だ。ただ特区に委ねる権限、財源の中身を詰めるのはこれからで、実現までなお曲折がありそうだ。
現に総務省は、合併した市町村を財制面で優遇する「合併特例法」(2005年3月までの時限立法)をたてに市町村レベルの合併を全国で進めているが、反対する市町村もある。一方、県レベルでも青森、秋田、岩手の北東北3県は道州制とはまた違った合併を視野に入れて広域行政を展開している。1888年以来の「県境」はすでに意味をなしていないからだが、都道府県を道州制にするとなると、各県単位の思惑がからみ、強力な政治的リーダーシップが必要になる。その意味では、今回の首相発言は、合併の手間がかからない北海道の地域的特性に目をつけたともいえる。
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