戦後イラクの復興を支援する閣僚級会議が、米国、英国、日本、欧州など73カ国と世界銀行など20の国際機関が参加して、10月23、24日、スペイン・マドリードで開催された。会議の議長総括で2007年末までに有償、無償合わせて総額330億ドル(約3兆6000億円)以上の拠出が表明された。
昨年1月、東京で開かれたアフガニスタン復興支援会議では総額45億ドルの拠出だったから、今回の拠出金の規模の大きさがうかがえる。トップは米国で203億ドル、2位が日本で50億ドル(約5500億円)、EU(欧州連合)15カ国で2億ユーロ(約260億円=2004年分)が主なもので、米国のイラク戦争に反対した仏、独両国はいずれもEU枠外での単独拠出は拒否した。この会議にさかのぼる10月16日には、国連安全保障理事会が新たな決議1511を採択、多国籍軍の派遣を決定、米国は米英主導の戦後復興から、国際協調を重要視するとの態度を示しているものの、12月15日までの憲法起草と選挙実施がなお不透明なことから、各国ともはっきりした方針を打ち出せないでいる。
日本は、2004年にODA(政府開発援助)予算のなかから無償資金15億ドル、2005〜07年に円借款(有償資金)で35億ドルを拠出する。15億ドルの内訳は、電力分野4億ドル、水の浄化、医療など保険衛生分野5億ドル、教育分野1億ドルなど。総額50億ドルは、2年半で5億ドルを拠出するアフガン支援の10倍にあたる巨額なものだ。同会議に出席した川口順子外相は、「中東地域の大国であるイラクの復興、安定に協力することは日本の国益に合致する」と積極的な貢献を強調したが、この背景には1991年の湾岸戦争のとき、総額140億ドルもの拠出をしながら、人的支援がなかったため関係国に感謝されず“小切手外交”と批判されたいきさつがある。
小泉首相は、日米同盟重視の立場から、米英主導のイラク開戦にいち早く支持を表明、7月に「イラク人道復興支援特別措置法」を制定して自衛隊派遣を決めたのに続き、今回の資金協力でも「任せてくれ、役割はわかっている」と語り、ブッシュ米大統領の来日(10月17日)に先立って15日に拠出額を決めた。これはあくまで日本が自主的に決めたという体裁を整えたもので、水面下では、8月以来、米政府高官や駐米大使などを通じて強い働きかけがあったといわれる。
これらの各国の拠出金は、世銀と国連開発計画(UNDP)が管理する信託基金「イラク復興国際基金」で運営される仕組みだ。しかし、実際には米国が連合軍暫定当局(CPA)が管理する「イラク開発基金」に直接供与、事業を通じて米国企業に資金を還流させることになる。一方、日本は資金が信託基金のなかに埋没し、カネを出しっぱなしとなる恐れがあることから、これを防ぐため政府は運営委員会に職員を派遣し、資金の行き先や個別事業の指定ができるよう国連と折衝している。
イラク復興の国際協調については、今回拠出しなかったロシアをはじめ独、仏両国が、イラクの主権回復をにらみながら来年春に拠出金増額に踏み切ることで、当初、国連が試算した目標額である「4年間で550億ドル」を達成できるかどうかが当面の課題になる。ただ、1250億ドルにのぼるイラクの対外債務の処理もまだ残っている。米国は主要国に債権放棄をせまる方針だが、日本をはじめ欧州は反対、ないし慎重な姿勢を崩していない。
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