12月8日、国庫補助金の削減をめぐる財務、総務、文部科学、厚生労働の各相による3回目の閣僚折衝が物別れに終わり、官房長官、ついで首相が調整に乗り出した。対立しているのは、生活保護費と児童扶養手当給付費の国庫負担率引き下げ、教職員退職手当補助金の一般財源化などだ。全国知事会は同じ日、「自分たちの都合でやっている。数字のつじつま合わせだ」(梶原拓会長=岐阜県知事)と批判し、国税を地方税に移管する税源移譲について、検討されているたばこ税でなく、税収の多い基幹税である所得税や消費税を対象にするよう緊急アピールを発表した。
国庫補助金の削減は、地方への税源移譲、地方交付税の見直しとともに、小泉首相がかかげた地方分権における「三位一体の改革」のひとつだ。ことし6月の「骨太の方針・第3弾」で、2004年度から3年間で4兆円を削減し、その8割程度を税源移譲する方針を決め、11月18日、来年度は1兆円を削減することが決定している。
国と地方を合わせた歳出(国民への行政サービス還元)全体の6割強を地方が占めているのに対し、税収全体に占める地方税の割合は4割しかなく、その差額分を国から地方への交付税や補助金で埋めている。国庫補助金は、使い道が自由な一般補助金と、特定の目的にしか使えない補助金で、一定割合を負担する特定定率補助金と、決まった金額を渡す特定定額補助金の3つに分けられる。
国のほうが多く税金を徴収しているのに、実際に住民へのサービスを行う地方への補助金には一定の基準を定めている。このため、地方の実情に合わない事業を選択したり、あまり必要がなくても補助金の出る事業を優先するなど、国による画一的な行政を強いられることによって、地方自治体が独自性を発揮できない仕組みになっているのが現実だ。地方分権は、これを改め、住民のニーズにあった行政サービスの提供を地方自治体にまかせるべきだという発想から出発したものだった。
補助金削減をめぐって、各省が対立した背景には、既得権の擁護をめぐる関係省庁や族議員の思惑があった。地方自治体の立場を代弁する総務省が地方自治体の自主性を重視して、裁量の拡大を主張するのに対し、省益を残しておきたい省庁側は、補助金削減の対象を限定的なものにしようとした。たとえば、文科省の「退職手当の一般財源化」案については、地方が「一般財源化してもあらかじめ支給する人数や額が決まっており、地方に全く自由度はなく、団塊の世代の退職で将来の負担増につながる」(浅野史郎宮城県知事)と反対し、総務省は再考を要求した。これに対し、自民党の文教族議員らが文科省の支援に加わり、抵抗する構図になっている。
慢性的な財源不足に直面している地方自治体にとって、補助金の削減だけが先行し、それに見合う税源移譲がなければますます自治体運営は苦しくなる。小泉首相は、8日、額賀政調会長に対し、「地方が喜び、しかも改革の芽が出ているようなかたちに検討を」と打開を指示した。10日夜、政府、与党間で最終調整の結果、「生活保護費引き下げ」は来年度見送り、代替案として公立保育所施設運営費補助金を一般財源化、「退職手当の一般財源化」は税源移譲までつなぎの特例交付金を新設――で合意した。これにより、今後は税源移譲と地方交付税の見直しに焦点が移る。いまのところ税源移譲はたばこ税で約4200億円、交付税は約1兆5000億円の削減が見込まれている。
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