1月12日、農林水産省と山口県は、山口県阿東町の採卵専門の養鶏農場で、家畜伝染病予防法に指定されている毒性の強い「高病原性鳥インフルエンザ」のウイルスが検出されたと発表した。1925年に東京、千葉、奈良で発生して以来79年ぶりのことだ。感染して死んだニワトリ約6000羽を含め3万4000羽を処分したほか、20万トンの卵を自主回収し、同農場から半径30km内の30農場に対しニワトリ、卵の移動禁止措置などがとられた。
鳥インフルエンザとは、A型インフルエンザ・ウイルスによって引き起こされる鳥の伝染病で、感染すると呼吸器系の障害を起こして死ぬ率が高く、ニワトリは産卵率が低下するなどの症状が表われる。ニワトリをはじめカモ、アヒル、ウズラ、七面鳥や野生の鳥も感染する。これまでベトナム、韓国、香港、米国、ベルギー、ドイツなどで発生しているが、とくに韓国では昨年12月中旬から大流行、すでに185万羽を殺処分、1000万個の卵を廃棄し、約14億円相当の被害が出ている。動物衛生研究所(独立行政法人・茨城県つくば市)の調べによると、今回の鳥インフルエンザ・ウイルスは、韓国で発生したのと同じ「H5N1型」で、過去、香港(1997年)とオランダ(2003年)で発生している。
鳥インフルエンザの毒性が世界的に注目され初めたのは、それまで人には感染しないとみられていたのに死者が出たからだ。ちなみに香港では1997年に18人が感染し6人が死亡(H5N1型)、昨年も2人感染し1人死亡(H5型)している。またベトナムでも昨年、香港や韓国と同型のウイルスと見られる感染によって、子どもを含む3人の死者が出た。オランダでは昨年に83人が感染し、1人が死亡(H7型)している。これらのケースではいずれも高熱を発し、体力の弱った人が肺炎を起こして死亡しているという。日本のニワトリへの感染ルートは解明されていないが、渡り鳥や野鳥が運んでくることもあり得るという。国立感染症研究所の調査によれば、人間への感染は鳥と濃密に接触した場合に限られ、鶏肉や卵からは感染しない。ただ、突然変異や豚を仲介にして新型ウイルスができ、それが人への感染性をもつウイルスになる可能性があるという。
農水省は昨年9月、鳥インフルエンザの防疫対応マニュアルをまとめ自治体に配布した矢先のことで、監視体制を強化するため毎月1回の抽出調査を求めることにしている。いっぽう、韓国の大流行に対しては、昨年12月12日から鶏肉などの輸入停止措置を講じている。政府は今度の発生に衝撃を受けており、これ以上感染が拡大しないよう国、自治体あげて対策に取り組む予定だ。また、いまのところ「食の安全」に及ぼす影響はないとみられるが、風評被害により消費の急減が起きるのを警戒して消費者対策もあわせて講じることにしている。
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