1月4日、菅直人民主党代表と神崎武法公明党代表が、NHKの報道番組で、ミサイル防衛システム導入にともなう武器輸出三原則見直しについて、そろって容認する発言をした。自民党は昨年2月に武器輸出規制の緩和を提案、すでに12月18日の記者会見で福田康夫官房長官が見直しを検討することを表明しており、今度の主要3党の一致によって武器輸出三原則見直しは、確定することになった。
武器輸出三原則とは、ベトナム戦争当時の1967年4月に佐藤栄作内閣が決めた方針で、@共産圏諸国、A国連決議による輸出禁止国、B国際紛争の当事国やその恐れのある国――に対し武器輸出を禁止した。その後、76年に三木武夫内閣が武器輸出を慎むという方針から「武器輸出に関する政府統一見解」を示し、その対象国を拡大した。しかし、中曽根康弘内閣のとき(1983年)の官房長官談話では、米国向けの武器技術供与を例外とした。さらに90年代にはいってからは、国連平和維持活動(PKO)や、旧日本軍の遺棄化学兵器処理などに従事する自衛官が携行する武器も例外扱いにした。
今回の見直しは、日米間で99年度から共同研究している次世代のミサイル防衛システムが生産段階に移行したときのことを想定したもので、日本が生産した部品を迎撃ミサイルの一部に使用すると、武器輸出三原則に抵触するのではないか、という疑義が出るため、これを払拭しておこうというものだ。また、米国から第三国への輸出が規制されるのを避けるという狙いもある。
武器輸出三原則は、非核三原則(核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず)とならんで日本の平和外交のシンボルとされてきた。だが、日本を取り巻く安全保障環境の激変、とりわけ北朝鮮の核開発、ミサイル(93年・ノドン、98年・テポドン)による脅威が今度の見直しに拍車をかけたのは間違いない。昨年12月19日、政府が「専守防衛の理念に合致する」(福田官房長官談話)としてミサイル防衛システムの導入を決定したのに対し、前述の「一定の条件の下での必要性は感じている」(菅民主党代表)、「専守防衛の枠内にとどまる」(神崎公明党代表)と評価した以上、武器輸出三原則見直しに同意するのは自然の流れではあった。ただ、公明党は「中東においては、大国の武器輸出が紛争の大きな引き金になっており、日本は武器を輸出しないことで信頼され、友好関係をたもっている。素晴らしい政策である三原則は堅持すべきだ」と、今度の見直しはあくまで例外措置だと強調している。
ミサイル防衛システムは、海上のイージス艦から発射し、大気圏外で敵ミサイルを迎撃するスタンダード・ミサイル3(SM3)、地上から発射し、大気圏内で迎撃する地対空誘導弾パトリオット・ミサイル3(PAC3)、弾道ミサイル対応型のレーダーシステム――から構成され、2007年度に実戦配備される予定だ。全システムに要する費用は約8000億円〜1兆円。これにともない「防衛計画の大綱」、「中期防衛力整備計画」の見直しも今年中に行われ、日本の防衛政策は従来の着上陸侵攻対応型から一変することになる。
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