1月19日(日本時間20日)、米大統領選挙の先陣を切って、米国中西部のアイオワ州で民主党の党員集会(各州によってシステムが異なり、予備選挙と呼ぶ州もある。アイオワの場合は共和党員も参加できる)が開かれた。このあと11月2日の投票日へ向けて約10カ月間にわたる戦いの幕が切って落とされる。4年に1度の大統領選挙は、全米50州における共和、民主両党の党員集会や予備選挙を経たのち、両党の全国大会で候補を指名し本選挙に臨むという段取りで行われる。口火を切ったアイオワ州では、共和党は現職のブッシュ大統領が勝利、民主党はケリー上院議員が1位となり緒戦を制した。27日にはニューハンプシャー州で予備選挙が行われる。
米大統領選挙は、大統領候補を有権者が直接選ぶのではない、間接選挙である。党員集会とは、あらかじめ支持する候補者を決めた党員やグループが同じ候補者を支持する人をできるだけ多数集め、その比率に応じて一定の数の代議員が割り当てられる。この集会は話し合いや挙手による採決で決めるが、候補者が参加者全体の15%の支持を得られなかったときは無効となり、その候補者の支持者は他陣営の草刈り場となる。これに対して投票で候補者を決めるのが予備選挙。予備選挙への参加資格は、有権者が州当局に登録し、そのとき支持政党を表明した党の予備選挙で投票するのが原則だ。こうして各州ごとに割り当てられた「代議員」の獲得数によって、党全国大会では候補者が一本化される。予備選挙の勝者同士が争う本選挙では、各州を代表する計538人の「選挙人」(各党幹部や有力支持者らで、事前に支持候補を明らかにする)を有権者が選ぶ。
アイオワ州では、民主党の下馬評で有利とみられていたディーン・前バーモント州知事が3位に終わり、2位はエドワ―ズ上院議員、4位がゲッパート下院議員という結果だった。次の民主党予備選挙にはクラーク・元NATO欧州連合軍最高司令官とリーバーマン上院議員も出馬、有力候補6人が指名獲得を目指してしのぎを削る。
予備選挙のヤマ場は、「スーパーチューズデー」といわれる3月2日(火)。この日はカリフォルニア州など゙10州で集中して予備選挙が行われるため、大勢がわかる。民主党は7月26〜29日にボストン、共和党は8月30〜9月2日にニューヨークで全国大会を開き、大統領候補を指名する。その後、遊説キャンペーン、テレビ討論などの選挙活動が展開され、11月2日に投票が行われる。選挙の方法は、州ごとに得票数1位の大統領候補がその州の選挙人をすべて独占するといういわゆる「勝者総取り方式」。なお選挙人の数は人口比で各州に割り当てられ、カリフォルニア州が最多で55人、最少はワイオミング州の3人、ちなみにアイオワ州7人、ニューハンプシャー州4人などとなっている。
開幕緒戦となった民主党のアイオワ州党員集会、ニューハンプシャー州予備選挙が注目されるのは、ここで3位以下になった候補者は指名を獲得できないというジンクスがあるからだ。1976年にはそれまで無名のカーター氏(前ジョージア州知事)が1位となり大統領になった例がある。また、72年にはやはり無名のマクガバン氏(上院議員)が2位となり、結局、指名を獲得したが、共和党のニクソン氏に敗北した。
上下両院で多数を占めている共和党は、ブッシュ大統領にいまのところ対抗馬はなく、豊富な資金力とあわせ独走の気配が濃厚である。ただ、選挙戦の争点であるイラク復興や対テロ戦争で思わぬダメージを受けた場合や、「ジョブレス・リカバリー(雇用なき経済回復)」といわれる経済政策の失敗があると、民主党候補に逆転される可能性もないとはいえない。民主党の大統領候補がだれになるか、いまの時点で予測するのはむずかしいが、ワシントン政界では未知の魅力があるクラーク氏か、ベトナム戦争の体験をもつ安定感のあるケリー氏の2人に絞られつつあるとみられている。長丁場の大統領選挙は、日米関係を外交の基軸とする日本にとって大きなイベントであると同時に、じつは政界の最大の関心事なのである。
|