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論争を読み解くための重要語
竹島と領土問題
2004.01.29 更新
 1月16日、韓国が、日本との間で領有権をめぐって対立している竹島(韓国名では独島=トクトと呼ぶ)をデザインした切手を発行した。川口順子外相は趙世衡(チョン・セヒョン)駐日大使を外務省に呼び「累次にわたり、とりやめを申し入れたにもかかわらず切手を発行したのはとうてい容認できない。竹島は歴史的、国際法上も日本の領土だ」と抗議した。これに対し、韓国政府は「政治的性格を完全に離れて、独島の優れた自然環境を素材にして通常の手続きで発行した。独島は歴史的、地理的にも、国際法上も韓国固有の領土である」と反論、真っ向から対立した。

 竹島は、隠岐島北西157kmの日本海に浮かぶ島で、1905年、日本政府は領土と宣言、地番を島根県隠岐郡五箇村とした。韓国が領有権を主張しだしたのは、1952年1月、当時の李承晩(イ・スンマン)韓国大統領が「李ライン」と称する排他的な漁業専管水域を設定してからだ。以後、沿岸警備隊を常駐させて「実効支配」を続け、日本の「不法占拠である」という批判を無視している。

 韓国が竹島の切手を発行したのは、1954年と2002年に次いで今度が3回目。計画が公表された昨年夏以来、総務省が「良識ある判断」を求めた書簡を送り、外務省が発行中止を申し入れ、小泉首相ら閣僚が不快感を表明したが、いずれも無視された。「小さな外交官」ともいわれる切手は、国を代表する側面を持つ。「万国郵便条約」では国際協力がうたわれ、外交上の争いのあるものはデザインの対象にしないという原則がある。韓国内ではこの切手の発行が大きな関心を集め、94万8000枚余が発売3時間足らずで売り切れ、「サイバー独島」というサイトが人気となっている。

 竹島と同じように領有権を主張して対立している日本の領土は、ほかに中国などとの尖閣諸島(中国名では釣魚諸島と呼ぶ)、それにロシアとの北方4島(国後、択捉、歯舞、色丹諸島)がある。尖閣諸島では、1月18日、中国の活動家20人を乗せた2隻の漁船が接近、領有の象徴だとする石碑を海中に投じる事件があった。新華社報道によると、日本の巡視船が彼らの進路を妨害したため、2人がけがをしたという。

 国際法の規定では、国家が領域として権能を及ぼす領土の様態を次の7つに分けている。「先占」(定住者のいない土地とみなされる地域を領有する意思を示し、実効的な占有を行う)、「割譲」(国家間の条約によって領域の一部を他国に移転する)、「併合」(条約で領域の全部を譲り受ける)、「征服」(国家が実力で他国の領域を取得する)、「時効」(国家が長い期間継続して主権者として支配した場合にその領域を獲得する)、「添付」(河口の土砂堆積などの自然現象で領域が拡大する)、「隣接性」(定住者のいない土地が国家の領域と地理的に近接しているときこれを領域とする)――がそれだ。

 尖閣諸島は「先占」、北方4島は「割譲」のケースにあたる。領土紛争はこれらの解釈をめぐって起きるが、ほかに(1)戦後処理の不備、(2)先占の解釈の相違、(3)国家間の条約不備や矛盾があった場合、(4)いくつかの原因の複合――が理由として挙げられる。竹島は(2)、(3)、尖閣諸島は(4)の例にあたる。とくに尖閣諸島では、1968年に海底に石油資源があることがわかり、それ以降、中国はじめ台湾、ベトナムの各国が領有権を主張しだした。



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