相変わらず警察の不祥事が跡を絶たない。2月21日、佐賀県鳥栖市で小学女児が連れ去られ、未成年略取容疑で福岡県警大牟田署の巡査(24歳)が逮捕された。全国的に同じような事件が頻発し、警察庁が対策を強化していた折も折、思わぬ身内の不祥事は、住民はもとより、警察内部に大きな衝撃を与えた。
福岡県警の調べによると、犯人は交番勤務の巡査。祖父が警察官だったこともあって、3度目の挑戦で採用試験に合格したという。1月には恐喝事件解決の功績で署長表彰を受けたほどの優良警察官だった。
昨年末、政府は「世界一安全な日本国の復活を目指す」(小泉首相)として犯罪対策閣僚会議を設置して行動計画を策定したが、犯罪抑止の決め手のひとつに警察官増員があった。今後3年間で1万人増員する計画だが、2004年度予算案では、まず3150人の増員を盛り込んだ。ちなみに2002年現在、日本の警察官1人あたりの人口比は、541人に1人、増員後は508人に1人となる。英国395人、米国の385人、ドイツ315人、フランス293人、イタリア276人とくらべると、その負担の大きさがわかる。
2002年の刑法犯の認知件数は約285万件。1996年から7年連続で戦後最悪の記録を更新した。検挙率も20.8%に低下するなど、治安の悪化は深刻だ。最終的には、警察官25万3000人体制が目標というが、せっかく警察官の数を増やしても警察が国民の信頼を裏切ったのでは、逆に国民の反発を招きかねない。実際、昨年1年間で懲戒処分を受けた警察官は433人で、過去3年間、400〜500人という懲戒処分の規模はほとんど変わっていない。警察の不祥事が多発した2000年3月、国家公安委員会が、有識者らで構成した「警察刷新会議」をつくり、監察要員の強化や人事見直しなどを提案したが、この数字を見る限り、不祥事が続発していることを証明している。
こうした不祥事を減らすため、警察庁は採用時の面接に時間をかけたり、また、面接官の訓練強化に取り組んできた。しかし近年、地方公務員である警察官は安定した職業とみられることから応募者数が多く、このため、きめの細かい面接が十分行われていないようだ。たとえば、昨年の警視庁の採用試験は男性11.5倍、女性19.3倍の競争率で、職種によっては30倍を超えたものもあった。
警察官は採用されると、1年間は警察学校で寮生活を送るが、この間の研修を通じて問題ありとされたときは、配属の前に説得して辞めてもらう仕組みになっている。元警視庁巡査でジャーナリストの黒木昭雄氏は「面接などで『なぜ警察官になるのか』という志望動機をみて、時間をかけて適性をみる必要がある。警察学校に行っている間は仮採用期間で、ここでふるいにかかるはずだが、"今はお勉強の期間"で、ちょっと我慢すれば、みんな卒業していく。ふるいになっていない」(東京新聞2月24日付)と、採用の問題点を指摘している。
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