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消費税の総額表示(内税方式)
2004.04.01 更新
 4月1日、消費税法の改正によって、店頭での商品やサービスの価格の表示は、消費税込みで表す総額表示(内税方式)にすることが義務づけられた。これまでは本体価格だけを示す外税方式が中心だったのが、消費税導入以来15年ぶりで一本化された。

 消費税は、物品税にかわる間接税だが、税収のなかではいまや所得税に次ぐ基幹税になっている。1989年4月に導入された当時の税率は3%だったが、97年4月に5%に引き上げられた。日本の消費税は、最終消費者が支払い、その税金を納税するのは、製造元、卸、小売りがそれぞれの流通段階で分担して行うという仕組みだ。価格表示については、これまで、外税、内税の両方式が認められていた。税抜きの本体価格を表示する外税方式から、あらかじめ税込み価格を表示する内税方式に統一したのは、「消費者はいくら支払えばいいかが一目でわかり、買い物がしやすくなる。また、商品やサービスの価格を比較できる」(財務省)というメリットがあるからだ。

だが、今回の改正では、本体価格との併記も認めているため、店頭では、「総額のみ」(スーパー、コンビニなど)、「総額と本体価格」(デパートなど)、「総額と税額」、「総額と本体価格、税額」(家電量販店など)と4種類の価格表記がなされている。本体価格が安い、との割安感を訴えたい売る側の事情によるものだが、消費者側には戸惑いがある。

 内税方式への一本化にあたって、業者サイドは、さまざまな対応をせまられている。大別すると、実質的な値下げに踏み切るか、便乗値上げするか、だ。というのも、今回、数量に関係なく本体価格の総計に一括して消費税率分を掛け合わせる現行の計算方式を、特例措置として2007年3月まで認めたこと、また1円未満の端数処理については、切り捨てを認めないとしていたのを、昨年9月一転して3年間は認めるとしたことによって、いろいろなやり方が出てくるからだ。

 業者サイドでは、値札の張り替えやレジのシステム変更にあたり、価格表示の変更によって売り上げが減らないよう、スーパーなど多くは消費税分を負担するなど事実上の値下げに踏みきった。しかし、端数の切り上げ、切り下げ、四捨五入の選択の仕方によっては、業者の価格や納税額に差ができるようになってしまった。たとえば、本体価格150円の商品10個を売った場合、1個あたり消費税は7.5円だから、端数を切り上げれば1個の総額表示は158円。消費者側からすれば、10個買うと1580円になる。ところが、従来通りの計算方式を採用すると、10個分1500円に税75円を加えた1575円となる。両者で5円の差ができてしまうのだ。散見される事実上の値上げは前者のケースだ。

 総額表示の導入について、主婦連合会の佐野真理子事務局長は「総額だけの表示では税金分はわかりにくくなり、痛税感を弱める。将来の消費税率アップの布石にされかねない」(読売新聞3月24日付)と心配する。また、日本百貨店協会など流通業界では、「財務省が特例措置を認めたのは、3年先以降の消費税率上げに向け、準備期間をやると言われたようなものだ」と、露払い役と見ている。小泉首相が「自分の任期中(06年9月)には消費税は上げない」と再三にわたり明言していることと重ね合わせると、首相の任期終了後には消費税引き上げは必至との観測が強まっている。

 今回の改正では、このほか、消費税に対する信頼性を高める一環として、透明性を確保する措置がとられた。業者が消費者から預かった税金を納めなくてもよい、いわゆる「益税」をなくすため、小規模事業者の納税義務免除をこれまでの課税売上高3000万円以下から1000万円以下に引き下げた。これによって、納税事業者は約136万件の増加となった。また、業種によっては有利になる簡易課税制度の適用対象を、同2億円以下から5000万円以下に引き下げ、厳しくすることによって税収増をはかった。



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