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スンニ派三角地帯・ファルージャ
2004.04.19 更新
 スンニ・トライアングル(スンニ派三角地帯)といえば、イラクの首都バグダッドとフセイン元大統領の出身地である北部ティクリート、中部のラマディを結んだイスラム教スンニ派(人口の約20%占める)の勢力地域のことだが、その中心部にあるファルージャ(バグダッド西方50km)に、いま世界の目が注がれている。昨年4月の旧フセイン政権崩壊後も、反米抵抗勢力の拠点ではあったが、現在スンニ派武装勢力と駐留米軍との間で衝突がくり返され、4月に入ってからだけでも、すでに1000人以上の死者を出すという危険地帯になったからだ。さらにここ数日は、日本人3人を含む40人近い外国人の人質、誘拐事件の舞台にもなっている。

 ファルージャは、バグダッドとヨルダンの首都アンマンを結ぶ高速道路沿いにある人口20数万人の都市である。この都市がにわかに発火したのは、3月31日、米国の民間人4人が惨殺され、遺体が引きずり回される事件がきっかけだった。このため米国は4月5日から海兵隊を投入、ファルージャを包囲し、犯人の身柄引き渡しを要求する掃討作戦を展開した。この間、米軍がイスラム教徒のもっとも神聖な場所であるモスク(礼拝所)を攻撃したことも火に油を注ぐことになった。ファルージャ周辺で、ボランティアら3人の日本人が武装グループに拘束されたのは、そのさなかのことだった。3人はタクシーでバグダッドへ移動中、この戦闘を避けるため迂回路を通っていて事件に遭遇した。

 日本人人質事件は、カタールの首都ドーハにある衛星テレビ局、「アル・ジャジーラ」に犯行声明が持ち込まれて(8日)わかった。ちなみに同テレビ局は、2001年のアフガニスタン侵攻の際には、国際テロ組織アル・カーイダのビンラディンの声明を独占放送するなど、「中東のCNN」と呼ばれている。

 犯行声明によると、「サラヤ・ムジャヒディン(戦士隊)」を名乗る新手のイスラム過激派で、当初はサマワに駐留する自衛隊の3日以内の撤退を解放の条件としていた。しかし、その後、「イラク・ムスリム・ウラマー協会」(スンニ派法学者組織)の要請に応じて、人質を解放する、と発表するも、現地からの情報が錯綜し、日本時間4月15日夜、3人は無事解放され、新たに拘束された2人の日本人も17日夕に解放された。これまでのところ犯人像については、ファルージャで大きな勢力を持つスンニ派部族、ドレイミ族が関与しているとみられているが、まだ確認はされていない。

 4月11日午前10時(日本時間午後3時)から12時間、ファルージャの米軍と武装勢力との間で一時停戦が合意され、さらに「政治的な対話のチャンネルを生かすために」(ギミット准将)12時間延長された。これに関連し12日、来日したチェイニー米副大統領は、会談の中で小泉首相に対し、「イラクで起きている暴力的な行為は小規模なグループによるもので、イラク人の大多数がそう考えているわけでない」と強調、改めて人質解放に全面協力することを約束した。また、ブッシュ大統領は14日、全米テレビで放映された記者会見で「テロリストには決して妥協しない。6月末のイラクへの主権移譲は変わりない。現地司令官が(増派を)望めば応じたい」と、反米武装勢力を排除して政権移譲プロセスを進めるこれまでの姿勢、方針を堅持することを強調した。

 政府は、8日の事件発生後ただちに逢沢一郎外務副大臣をヨルダンに派遣、現地対策本部を設置した。現地では、イラク統治評議会、聖職者指導者らとのパイプを通じて情報収集を行うとともに、人質の解放に向けて強い働きかけを行ってきた。中東情勢に詳しい酒井啓子・アジア経済研究所参事は「人質解放が遅れているのは、ファルージャ情勢(注・現在、米軍を中心に占領軍が包囲しているといわれる)とリンクしているためだ。人質は米軍撤退を求める武装勢力側のカードにされている可能性が高い」(読売新聞4月12日付)と分析していた。



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