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ウリ党
2004.04.22 更新
 韓国の総選挙(4月15日投票、即日開票)は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領を選出した与党、ウリ党が、改選前の49議席から3倍増の152議席を獲得、最大野党のハンナラ党の121議席をおさえ、単独で過半数を制した。選挙前には20%台に支持率が低迷し、「総選挙の結果に従って進退を判断する」と、今度の総選挙を信任投票と位置づけていた大統領は、1985年以来19年ぶりとなる与党過半数の勝利でいっきに政権基盤を強化、息を吹き返した格好だ。この結果を受けて、憲法裁判所における大統領の弾劾審判が撤回されるとの見通しが出始めている。

 ウリ党(ヨルリン・ウリ党〈開かれた我が党〉の略称)は、昨年11月11日、新千年民主党を離脱した大統領を支持する議員47人で結成された。韓国語で、ウリは「我々の」という意味だ。80年代の民主化運動を戦った弁護士の盧大統領と同じような学生運動出身者が多く、綱領には「新しい政治」、「富裕な国」、「暖かい社会」、「韓半島の平和」――の4つを柱に掲げている。

 韓国の総選挙が日本やアジアの注目を集めたのは、安全保障と外交政策の動向、とりわけ対米、北朝鮮との関係がこの先どうなるかが気になるからだ。選挙前は圧倒的多数(3分の2)を占めていた野党が勝利すれば、弾劾審判が可決され、韓国政治史上異例の職務停止中の大統領が辞任に追い込まれ、親北朝鮮政策――いわゆる太陽政策が修正される。これに対し、与党が勝てば北との「宥和政策」がさらに加速されるのは確実で、6カ国協議の場における米日韓の連携体制に亀裂が入りかねないとみられていた。

 4月19日付の「労働新聞」(北朝鮮労働党機関紙)は、韓国総選挙について、「ハンナラ党をはじめとする守旧保守勢力は人民の厳正な審判を受けた」と論評し、ウリ党の勝利を称えた。いっぽう、鄭東泳(チョン・ドンヨン)・ウリ党議長は、「国民は大統領と民主主義を守ってくれた。これは単なる選挙ではない。歴史なのだ」と手放しで自賛してみせた。

 韓国は一院制で、国会の定数は299議席。今回の総選挙のポイントは、まず飛躍的に議員の世代交代が進んだことにある。全体の70.2%、210人が新人で、再選は95人にとどまった。大物では親日派の金鐘泌(キム・ジョンピル)自民連総裁(元首相)が落選、19日には43年間の政治生活にピリオドを打った。年齢層では30〜50歳代が83.6%、250人を占めた。かれらは60年代生まれで、80年代に学園で民主化闘争を経験した30〜40歳代に支持された。ソウルなど大都市に住み、希薄になりつつある儒教社会より、むしろ競争社会になじんできた層だ。かれらはまた、労働組合や市民団体を通じて社会活動にも多くかかわっている。

 第三党に左派の民主労働党が初進出、10議席を獲得したことにあらわれているように、韓国政界が一段と革新色を強めたことは、今後の北東アジア情勢に微妙に影を落とすことになる、と指摘する識者は多い。北朝鮮の核開発の脅威や拉致問題をかかえる日本の立場として、とりわけ気がかりなのは、「核問題では米国も譲歩すべきだ」、「北への経済支援は必要」と主張するウリ党政権が問題解決の障害になりはしないかということだ。当面は、北朝鮮を「反国家集団」と規定した国家保安法の改定をめぐり、「自主・民主・統一」を掲げるウリ党を中心とする革新勢力と保守のハンナラ党、自民連との衝突は避けられそうにない情勢だ。

 韓国内に長く続いてきた地方対地方の対立を象徴する「三金時代」(金泳三=キム・ヨンサン、金大中=キム・デジュン、金鐘泌)に幕が下り、世代対立が鮮明化したことも大きい。有権者の70%を占める20〜40歳代は、朝鮮戦争(50〜53年)を知らない世代であり、北朝鮮に同胞意識を持つ。つまり共産主義への脅威が薄く、その一方で反米意識が強いのが特徴だ。憲法裁判所の弾劾審判では、ハンナラ党の朴槿恵(パク・クネ)代表が鄭ウリ党議長の「政治的解決」要請を拒否(16日)、与野党の攻防がすでに始まっており、韓国政治は今後、波乱含みに推移しそうだ。



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