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道州制特区
2004.07.15 更新
 北海道を道州制のモデルにしよう――小泉首相の音頭でスタートした「道州制特区」。高橋はるみ北海道知事は、「ことし(2004年)は道州制元年。道州制を導入して北海道を活性化する」と張り切っているが、肝心の道州制推進プログラムの具体化は容易でない。既得権限を手放したくない中央省庁の抵抗が予想以上に強いためで、せっかくの道州制導入がしりすぼみになりかねない、と危惧する声が関係者の間で出始めている。

 道州制は、現在の都道府県を廃止し、全国を九州、東北などブロックごとの広域的な枠組みに再編するものだ。国の役割は、外交、防衛、通貨発行など基本政策に限定し、その他は道や州の地方自治体に委ねる。国から権限や財源を移し、中央集権型行政に代わる地方分権型行政を推進するための有効な手段として考えられていた。

 道州制が、明治以来の中央集権体制を転換させる地方分権の切り札として注目されだしたのは、国が地方に交付金や補助金を分配する現行の仕組みが国、地方にむだを生み、巨額の財政赤字を生み出す一因になったからだ。そこで地方を大きなブロックに分け、効率的に行うようにすれば、税金のむだ遣いがなくなる、というわけだ。その受け皿として、地方の自立のための広域連携のメリットが強調され、まず市町村合併が推進され、ついで道州制の導入が考えられた。

 道州制特区は、2003年8月、高橋知事が、小泉内閣の「構造改革特区」構想に加えるよう要請し、同年12月、政府の経済財政諮問会議において、首相が導入の検討を指示し、具体化に踏み出した。ことし4月、高橋知事は「道州制では、国の出先機関との一元化は不可欠だ」として、道州制推進プログラムのなかに、国の出先機関である北海道開発局や経済産業局と道庁との整理・統合を盛り込むよう提案した。また、国が全国一律で定める政省令を道の条例で書き換えられる「上書き権」や、地域に即した介護報酬など具体的な規制緩和や権限移譲も要望しようとしたが、関係省庁や道選出国会議員からいずれも修正を迫られていた。

 こうした背景には、長い間続いてきた北海道における国の出先機関、北海道開発局と道庁との二重行政の現実がある。1951年に北海道開発法に基づいて、国=開発局が地域の道路整備など主な開発を計画、実施する仕組みができた。現在、開発局に勤務している職員は約6500人で、うち札幌市の本庁に約900人、それ以外は11の開発建設部と144の事務所、事業所に勤務している。いっぽう道庁職員は約20000人で、本庁に約3800人、残りは14の支庁や保健所、土木現業所などに勤務していて、国の開発建設部と道の土木現業所は、ほとんど同じ地域で道路、河川の整備、管理をしているのが実態である。北海道につぎ込まれる公共事業費は、国の約1割(2003年度8024億円)に及ぶ。統合されればこれが大幅に削減されるのは避けられず、開発局側は「道州制が実施されると、公共事業が3000億円減り、雇用が4万1000人減少する」と道州制への移行を牽制する。

 道州制推進検討会議座長で北大大学院教授の宮脇淳氏は、「農業への民間企業の参入を認めるとか、観光業や医療分野でも規制を見直すなど、北海道固有の資源を積み上げていくことで、成功事例をつくっていく。それを実現するためには、独自に考える能力と理念が必要になり、それが機能しないと札幌一極集中を起こしかねない。道庁に権限が集中し、市町村は疲弊するかもしれない。そうしないために、道州制は道内分権とセットで議論するように提案している」(週刊ダイヤモンド3月27日号)と、道州制推進のもうひとつの課題を指摘している。

 また、新藤宗幸・千葉大教授は、北海道の道州制について、「国税の道移管、許認可権限の移譲や道内の政治・行政制度の多様化を図る、一国多制度を展望した大胆なパイロットプランを提示すべきである。北海道の構想力いかんによって自治体先導の地方制度改革の重要な一石となり、政治もまた構想の具体化を図らざるを得なくなる」と提案(日本経済新聞7月13日付)している。



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