8月26日、携帯電話のコンテンツとして急増している「着うた」(着信うた、KDDIが商標登録)の配信をしている大手レコード会社5社に対し、公正取引委員会は、独占禁止法違反(不公正な取引など)の容疑で立ち入り検査を行った。翌27日にも他のレコード会社に検査が入り、約20社が対象にされた。携帯電話業界に公取委がメスを入れるのはこれが初めて。
「着うた」は、歌声入りの楽曲を携帯電話の着信音として配信するサービスで、CD原盤を音源としてサビの部分など約15〜30秒を携帯端末に取り込んで設定する。2002年12月、KDDIの「au」が配信サービスを始め、その後、ボーダフォン、NTTドコモが追随し、いまは若者層を中心に約1500万台が普及している。1曲あたり50円〜200円かかるほか、ダウンロードするためのパケット通信料も必要だ。
これに対し、「着メロ」(着信メロディー、東京電話アステルが商標登録)は、既存の曲を2次使用するもので、カラオケと同じように日本音楽著作権協会(JASRAC)に対し「著作権」の使用料を支払うだけで済み、1曲20円と安い。だが、「着うた」の場合は、「著作隣接権」(作品を世に送り出した人に認められる権利。歌手、演奏家、レコード会社、放送事業者らが対象)に基づき2次使用料も支払わなければならない。このため、そのノウハウをもつ大手レコード会社らが新たなビジネスチャンスとして共同で配信会社「レーベルモバイル」をつくるなど進出してきた。現在の市場規模は約100億円(使用曲数1憶曲超)で、今後さらに増大するとみられている。
今回、独禁法違反に問われたのは、大手5社(エイべックス、ソニー・ミュージックエンタテインメント、東芝EMI、ビクターエンタテインメント、ユニバーサルミュージック)と着うた配信会社「レーベルモバイル」(約20社が参加)などで、新規参入を目指す会社に対しCDの使用許可を拒否するなど、妨害した疑いが持たれている。この5社の扱う曲は邦楽全体の約6割を占め、約100社ある着うた配信会社のうち、レーベルモバイルが約8割の市場を占有している。公取委は、レーベルモバイルの配信サイトでないと人気曲がダウンロードしにくい状況を作り出し、シェアを維持しているとみている。
携帯電話の前身は、日本電信電話会社(いまのNTT)が1953年に開発した「船舶電話」で、「自動車電話」(79年)、「ショルダーホン」(85年)を経て87年に「携帯電話」が登場した。改良と軽量化が進み、NTTドコモがスタートした92年前後からブーム化、レンタルから買い取りになった94年以降は急増し、現在、携帯電話の契約者数は8665万8645人(2004年3月末、総務省調べ)で、人口普及率は67.9%だ。ちなみに日本以外で普及度が高いのは、中国、米国、台湾、香港、韓国の順である。米国ではレコード会社による楽曲の開放が進み、流通業者など異業種が参入することにより価格競争が激化しており、今度の公取委の摘発が、日本でも携帯サイトへの楽曲開放の可能性を作り出す、との見方もある。
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