小泉首相は、第二次改造内閣の発足(9月27日)に伴い、新たに山崎拓・前副総裁と川口順子・前外相を首相補佐官に任命した。首相の盟友である山崎氏は派閥(近未来政治研究会)の領袖で、来年4月の衆院補欠選挙(福岡2区)に出馬準備中だが、現在は落選中だ。安全保障政策に精通する山崎氏は、米軍再編問題や北朝鮮拉致問題を、川口氏は国連改革問題など外交懸案を担当する予定だ。
首相補佐官は常勤と非常勤に分かれるが、山崎氏が非常勤である以外はみな常勤で、待遇は特別職の国家公務員。常勤の給与は事務次官並みの月額約113万円、非常勤は日当が約3万8000円。小泉首相は「政治全般の相談相手になってもらう。むずかしい情勢でも私の力になってくれるのではないか」と山崎氏への期待は大きく、山崎氏自身も連日のように首相官邸に出勤している。ただ、山崎氏は日給を受け取らない意向を示している。
首相補佐官は、米国の大統領補佐官がモデルで、1993年、最初に導入したのは細川護煕首相だった。このときは法律上の根拠を持たない「首相特別補佐」と称した。当時は非自民連立政権で、日本新党出身の細川首相と盟友関係にあった新党さきがけの田中秀征・元経済企画庁長官が、首相と各党・会派のパイプ役と相談役を兼ねて就任した。次の自民、社会、さきがけの連立政権では、社会党の村山富市首相との連絡役に自民党の中川秀直氏がついた。「首相補佐官」の名で初めて内閣法に「内閣の重要政策に関し、首相に進言し、及び首相の命を受けて、首相に意見を具申する」との規定が盛り込まれたのは、1996年、橋本龍太郎首相のときである。
このときは水野清・元自民党総務会長が行政改革担当に、元外務省北米一課長で外交評論家の岡本行夫氏が外交担当で起用された。岡本氏は小泉首相の際も補佐官に就任し、イラク問題などを担当した。2001年、小泉首相のときから3人だった枠が5人に増員され、現在の陣容は、山崎、川口両氏のほか牧野徹・元建設事務次官(都市政策担当)と渡辺好明・前農林水産事務次官(郵政民営化担当)の計4人。
今回の山崎、川口両氏の首相補佐官起用については、自民党や政府内には外交、安全保障政策が二元化するのではないかとの懸念を示すむきがある。現に、町村信孝外相は「選挙にエネルギーを注いでもらいたい」と牽制するいっぽう、川口氏に対しても「国会の制約で(外国へ)出られないときに代理役としてがんばってもらう」と、外交の主導権は外務省が握る意向を示した。防衛庁の場合、大野功統防衛庁長官は山崎氏の派閥であり、首相官邸との意思疎通はスムーズにいきそうだ。
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