11月14日、天皇の長女、紀宮(のりのみや)清子(さやこ)内親王の婚約が内定したことが明らかになった。天皇家の息女の慶事は、昭和天皇の五女、清宮(すがのみや)貴子(たかこ)内親王が1960年3月10日、島津久永氏と結婚して以来44年ぶりだ。紀宮さまの婚約相手は、次兄にあたる秋篠宮さまのご学友だった黒田慶樹氏(都庁職員)で、秋篠宮さまが事実上の仲人役を果たされた。朝日新聞がこれをスクープしたため、急拠、宮内庁が記者会見して内定の事実を認めたもので、新潟県中越地震の被災者への配慮から正式発表を11月初めから12月下旬に延期していた事情を説明した。また詳細の公表は先送りした。
皇室の制度を定めた「皇室典範」の規定(12条)によると、天皇の子、孫までの内親王(女子)は、結婚した場合には皇族の地位を離れなければならない。「皇統譜」から離脱すると、民間人として名字を持つ新たな戸籍がつくられ黒田清子さんとなり、選挙権、被選挙権、納税義務が生じる。その際、品位保持などを目的に一時金が支払われることになっている。「皇室経済法」の規定では、紀宮さまのケースでは1億5250万円を超えない額になるとみられ、挙式前に首相や財務相らが参加する「皇室経済会議」で決められる。ちなみに島津貴子さんのときは1500万円だった。
天皇家では、昨年1月に天皇が前立腺がんの手術をされたり、皇太子妃雅子さまが体調を崩されて長期療養を続けるなど明るいニュースに欠けていた。その意味で「さーや」(紀宮の愛称)の婚約内定は、「台風や地震などが続くなか、私たちの心を明るくしてくれる出来事。めでたいことだ」(宮内庁御用掛で歌人の岡野弘彦氏、読売新聞11月15日付)との談話で代表されるように、国民には久々の心あたたまる話として受け止められた。
奥田碩・日本経団連会長は「年末商戦など消費に刺激を与える明るいニュースだ」との感想を語ったが、ロイヤルウェディングに早くも経済効果が出始め、11月15日の東京株式市場では、真珠メーカーや老舗デパートの株価が急上昇した。結婚式場や新婚旅行、家電販売など国内のブライダル市場は総額で5兆円といわれるが、晩婚化の影響で市場が縮小気味だけに、歓迎ムードが高まっている。
紀宮さまは1969年4月18日生まれの35歳で、お相手の黒田氏は4歳年上の39歳だ。お二人はメールで互いに連絡を取り合い、秋篠宮さまを通じて信頼を築いてこられた。地震被災者への配慮もお二人が話し合って決められたという。12月の婚約正式発表の後は、来春にも予定される結婚式を前にして、結納にあたる「納采(のうさい)の儀」を皮切りに、「告期(こっき)の儀」(結婚式の日取り決定)、「宮中三殿=賢所(かしこどころ)、神殿、皇霊殿に謁するの儀」(ご先祖への参拝)、「朝見(ちょうけん)の儀」(両陛下にお別れのごあいさつ)という皇室の各儀式を経ることになっている。
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