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プライマリーバランス(基礎的財政収支)
2004.12.23 更新
 12月20日、財務省は、2005年度予算案の原案を各省庁に内示した。復活折衝を経て、24日には政府案を閣議決定する。予算案では、焦点のひとつである一般会計の基礎的財政収支(プライマリーバランス=Primary Balance)が、前年度比3兆737億円縮小したものの、まだ15兆9478億円の赤字だ。これで2年連続の縮小となり、財政健全化へわずかに前進した。

 プライマリーバランスとは、国の借金である国債の発行による収入(34兆3900億円)と、過去に発行した国債の償還や利払いの国債費(18兆4422億円)を除いた国の「支出と収入のバランス」を指し、国の財政の健康状態を示すバロメーターである。公共事業や社会保障など国の政策に使う支出(47兆2829億円)や、国から地方への交付金など(16兆889億円)が、税収(44兆70億円)など本来の収入でどの程度まかなえているかをみる指標であり、プライマリーバランスの赤字とは、支出が収入より多く、国債という借金に依存している状態を意味する。

 05年度末の国債発行残高は約538兆4000億円で、約511兆円と見込まれる国内総生産(GDP)を初めて上回る見通しだ。いっぽう、国と地方を含めた長期債務残高もGDPの1.5倍の774兆円に達し、国民1人あたり606万円の借金をしている計算だ。

 プライマリーバランスを均衡させるか、黒字にするためには、支出を減らすか、税収などの収入を増やすか、両方を同時平行するかだが、財務省の試算によると、財政赤字が現状のまま推移した場合、10年後には消費税率(現行5%)を21%に引き上げるか、社会保障費などの歳出項目をいまの3分の2規模に削減しないと、プライマリーバランスの赤字は27兆8000億円に増大するという。つまり、財政再建のためには、徹底した歳出削減と、一定の増税は避けられないというわけだ。識者の間でも、少子高齢化社会に突入しているいま、法律や制度で支出額が決められている社会保障費の削減は困難なことから増税を支持する声が強まっている。

 プライマリーバランスは、1993年度予算で初めて約2兆5000億円の赤字になったのを皮切りに、その後、景気対策のための財源不足を国債の大量発行によって補ったため,赤字幅が拡大を続け、03年度には過去最高の20兆4000億円を記録した。財政赤字の増大を危惧した宮沢財務相(当時)は01年3月、国会答弁で「わが国の財政は破局に近い状況にある」との危機感を露わにした。このあと小泉首相は、01年5月、所信表明演説で、02年度予算で国債発行を30兆円以下に抑えることと、「持続可能な財政バランスを実現するため、例えば、過去の借金の元利払い以外の歳出は新たな借金に頼らない」と公約し、具体的には「プライマリーバランスを2010年代初頭に黒字化する」との目標を掲げた。それから4年、厳しい財政状況に変わりはない。



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