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2006年、株価はさらに上昇する?
2005.12.29 更新
*このコーナーでは、『日本の論点』スタッフライターや各分野のエキスパートが耳寄り情報、マル秘情報をもとに、政治・経済・外交・社会などの分野ごとに近未来を予測します。

 株価の上昇が止まらない。2005年5月に一時的に1万1000円台を割り込んだ日経平均は、それ以降ほぼ一貫して上がり続け、12月1日には終値で1万5000円をあっさり突破。同26日の終値は5年2カ月ぶりに1万6000円を超えた。わずか半年で、約50%も跳ね上がったことになる。また、東証1部の時価総額は同5日に500兆円を突破した。これは80年代末のバブル期以来約15年ぶりで、ピーク時の約8割の水準だ。

 こうした株式市場の活況を、“バブル”とする見方も少なくない。経団連の奥田碩会長は5日、定例記者会見の席で「日本全体がバブル期のような雰囲気になってきた感じがする」と指摘。その一例として株式市場を挙げ、「乗り遅れるのでは、という焦燥感から買いが買いを呼んでいる」と懸念を示している。たしかに、ネット証券の台頭によって個人でも株式投資が身近になり、書店には投資関連の書籍や雑誌の特集記事が溢れている。冷静な判断以前に、「株で大きく儲けられる」というイメージが蔓延しているようだ。

 しかし、バブル時と大きく違う点がいくつもある。その第一は、株価水準の指標であるPER(株価収益率/株価が一株あたり利益の何倍にあたるかを示す)の値だ。バブル時の東証1部上場企業の平均は60~70倍に達していたが、現在は約23倍である。欧米の主要市場は14倍前後なので、割安とはいえないが、大きく乖離しているわけでもない。言い方を変えるなら、昨今の株高は企業の好調な業績に裏打ちされているといってよい。

 株式市場をとりまく環境も大きく変化した。バブル時の主な投資主体は、銀行や生保などの国内の機関投資家だったが、現在では外国人投資家が上昇相場を牽引している。彼らにとっては世界の各市場への分散投資の一環だが、それだけ日本株式への先高期待が強いということになる。実際、企業による株式の持ち合いは解消に向かい、流動性は確実に高まっている。また、株主重視の姿勢を打ち出し、経営の透明性や配当性向を高めつつある企業も少なくない。

 では2006年、株価はどう動くのか。多くの市場関係者は、このまま堅調な動き、あるいはさらなる上昇を予測している。その中心的な役割を果たしそうなのが、やはり個人投資家だ。日銀が05年12月に発表した「資金循環統計(9月末、速報)」によると、個人が保有する株式の金額は前年同期より約25%増、投資信託は同約28%増だった。超低金利状態が続いている以上、貯蓄から投資へという流れは必然だろう。ただ、それでも個人金融資産全体に占める株式と投資信託の割合は約13%でしかない。一方米国では、この値が47%に達している。株式市場に資金が流入する余地は、まだかなり大きいといえそうだ。

 そこで重要なのが、個人投資家に対する「投資教育」だ。すでに証券会社や一部の学校などで実施されているが、金融資産の健全な投資や、金融市場の知識をもつため、また闇雲な「買いが買いを呼ぶ」という状態をつくらないためにも、これは不可欠なことではないか。

(島田栄昭 しまだ・よしあき=『日本の論点』スタッフライター)


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