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国連改革
2005.03.24 更新
 3月20日、国連(加盟191カ国)のアナン事務総長は、「より大きな自由の中で」と題した国連改革に関する報告書を公表し、翌21日、国連総会に勧告した。創設から60周年を迎えた国連だが、2003年3月、イラク戦争をめぐって加盟国の対立が露わになり、一時は機能不全の状況に陥っていた。報告書は、事務総長の諮問機関であるハイレベル委員会が昨年12月にまとめた提言をベースにし、「平和、繁栄、人権擁護のための組織に再生」へ向け加盟国の行動と決断を求めている。

 国連改革の焦点である安全保障理事会(安保理)拡大については、(A)常任理事国を現在の5カ国(米英仏露中)からさらに6カ国増やして11カ国に、非常任理事国を3カ国増やして13カ国にする、(B)任期4年で再選可能な準常任理事国を8カ国新設し、非常任理事国を1カ国増やす――の2案を提示、また「現実性のある他の案」も考慮すべきだとした。加えて、「9月の特別首脳会合前に合意に達するべきだ。加盟国のコンセンサスができないことを延期の理由にすべきでない」と、暗に多数決による早期決着を求めた。

 報告書はこのほか、対テロ条約の策定の必要性やジェノサイド(民族大量虐殺)から人々を保護する責任があることをうたい、武力行使に踏み切る際の原則や基準を定めた安保理決議の採択を要請している。さらに紛争解決後に平和の定着を支援する平和構築委員会の創設を求めている。また、途上国の開発支援として、ODA(政府開発援助)を2015年までに対GNP(国民総生産)比0.7%まで引き上げることを先進国に要求している。

 日本が強く要求してきた「敵国条項」(国連憲章53条、107条)の削除も盛り込まれた。町村外相は21日、「改革実現に向けて弾みとなる」との歓迎談話を発表した。「A案なら一つはもちろん日本だ」(アナン事務総長)と日本の常任理事国入りが期待されるものの、実現するかどうかは予断を許さない。というのも、過去、非常任理事国が6カ国から10カ国に増えた1965年以降に安保理は拡大されておらず、93年以来の拡大論議も(1)拒否権を持つ現在の5常任理事国の本音は拡大反対である、(2)日本、ドイツ、インド、ブラジルの候補国に対し、隣接の韓国、イタリア、パキスタン、アルゼンチン、メキシコがそれぞれ反対している、(3)決議案採択には加盟国の3分の2(128票)以上が必要で、地域、国の利害も対立している、といった事情があるからだ。

 いっぽう、米国は、「米外交の道具として役に立たない」(高官)と、国連活動に冷淡だ。現にブッシュ大統領は、新国連大使に国連批判を繰り返してきたボルトン国務次官を起用したばかり。アナン事務総長は、こうした米国に配慮して、人権委員会の人権理事会への改組、民主化基金の創設など、米国の主張を取り入れた勧告を行った。しかし、ODAの負担増に反発するなど、実際のところ米国自身が国連改革の前途を多難にしているといってよい。


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