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論争を読み解くための重要語
ヨハネ・パウロ2世
2005.04.07 更新
 4月2日午後(日本時間3日午前)、ローマ法王ヨハネ・パウロ2世がバチカン市国の法王宮殿で病気のため死去した。84歳。1978年10月、ポーランドのクラクフ大司教から枢機卿を経て第264代法王に就任、イタリア人以外の法王は455年ぶりだった。8日に葬儀を行い、その後、早ければ18日からコンクラーベ(法王選挙会議)を開き、後継候補の枢機卿(年齢は80歳未満)117人の中から新法王を選ぶ。

 法王(日本では教皇という)は、世界に約11億人いるカトリック信者(日本には約45万人=日本カトリック中央協議会調べ、2003年3月末現在)の頂点に立つ。キリストの12人の弟子のうちの1人、使徒ペトロの後継者で、地上におけるキリストの代理者とされている。また、信者にとっては信仰上の父で、尊意をこめて「パパ」と呼ぶ。法王の住まうバチカン市国は、ローマの街なかにある世界最小の主権国家。領土は44ヘクタール、人口は1000人足らずだ。法王はこのバチカン市国の元首でもある。ほかのキリスト教(プロテスタント、ギリシア正教、ロシア正教、英国教会)と異なるのは、法王のもと、上位から枢機卿、大司教、司教、司祭,助祭という「聖職位階制度」と修道会制度を持つ。カトリックでは、聖書を読み解くことよりも生まれてから死ぬまでの宗教儀礼を大切にする。なかでもとくに重要なのが、神父が信者に行う7つの秘蹟(洗礼、堅信、聖餐、ゆるしの秘跡、病者の塗油、叙階、婚姻洗礼)だ。

 ナチス・ドイツの占領下にポーランドの地下神学校に通った経験を原点に、パウロ2世はその在任中、世界に向けて精力的に平和のアピールを行った。日本には1981年2月に訪れたが、外国訪問は104回に及び、「空飛ぶ聖座」と呼ばれるほどだった。ポーランドの民主化運動を精神的に支え、東西冷戦の崩壊を促したのは、世界的業績と評価されている。また宗教間の対話にも積極的に取り組んだ。初めてシナゴーグ(ユダヤ教会堂)やエルサレムの聖地を訪問し、約1000年ぶりにギリシア正教会に対し東西分裂を謝罪した。また、天文学者ガリレオ・ガリレイの地動説を350年ぶりに認め、かつての宗教裁判を謝罪した。

 いっぽう、同性間の結婚や人工妊娠中絶、コンドーム使用に反対するなど、教義にかかわる面では保守的な考えを譲らず、穏健派やリベラル派の反発を招いた。このため、次期の法王選びでは、主流のバチカン派(官僚派で中央集権)と、巻き返しを図る教会派(分権派)のせめぎ合いは必至といわれる。システィナ礼拝堂ではじまるコンクラーベでは、世界52カ国から参加した117人の枢機卿(日本には2人)によって、3分の2超を獲得する当選者が出るまで何回も投票を行う。新法王が決まると宮殿の煙突から白煙をあげ、鐘を鳴らして信者に知らせることになっている。


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