今週の必読・必見
日本を読み解く定番論争
日本の論点PLUS
日本の論点PLUSとは?本サイトの読み方
議論に勝つ常識一覧
執筆者検索 重要語検索 フリーワード検索 検索の使い方へ
HOME 政治 外交・安全保障 経済・景気 行政・地方自治 科学・環境 医療・福祉 法律・人権 教育 社会・スポーツ
論争を読み解くための重要語
JR西日本・福知山線脱線事故
2005.04.28 更新
 4月25日、兵庫県尼崎市のJR西日本福知山線で起きた脱線事故は、死者が100人を超えるような大惨事となった。国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会は、兵庫県警、尼崎市消防署と協力しながら原因の究明にあたっているが、直接の原因は、回収したモニター制御装置の分析から、カーブで速度を上げたあと、急ブレーキをかけたためとみられている。また過密ダイヤ、運転士の管理・教育体制、軽量化した車体、事故防止装置の遅れなど、複合的な要因が重なったことも指摘されている。一方、兵庫県警捜査本部は、26日、業務上過失致死傷容疑でJR西日本に対して強制捜査に着手し、車掌からの事情聴取などを行い、運行資料などを押収した。

 多数の死傷者が出た電車の脱線事故としては2000年3月8日、地下鉄日比谷線事故が記憶に新しい(5人死亡)。戦後の鉄道事故としては、八高線脱線事故(1947年、死者187人)、常磐線三河島事故(62年、同160人)、横須賀線鶴見事故(63年、同161人)に次ぐ大事故だ。

 これまでの調査では、(1)事故を起こす前の伊丹駅で約40mオーバーラン(当初は8mと虚偽の発表)し、1分30秒の遅れを取り戻そうと、制限速度の70kmをはるかに超えた約108kmのスピードを出していた、(2)ATS(自動列車停止装置)はあったが、車止めに衝突しそうなときに有効な旧式タイプで、速度の超過を防げるものではなかった(6月に更新する予定)、(3)車両は207系ステンレス製で軽量化されているため、衝撃を吸収しやすい、(4)線路の内側にもう1本ずつレールを敷設する「脱線防止ガード」がなかった、(5)福知山線は私鉄の阪急宝塚線と競合する路線で、JR西日本の「サービス強化」の方針によって、朝夕のラッシュ時は分刻みの過密ダイヤで運行されていた。また定時運行にミスがあると、減俸など乗務員にペナルティが課されていた――などが明らかになった。

 地下鉄事故の事故調査検討会委員を務めた東大大学院教授の家田仁氏は、「ポイントは、スピード、線路、車両、外部要因の4点だろう。今回、衝撃的なのは、電車が激しく損壊し、多くの乗客が亡くなったことだ。電車が事故に遭っても、被害が少なくなるよう、車体を含めて鉄道システム全体についてチェックする必要がある」と指摘している(読売新聞4月26日付)。効率を最も優先するJR西日本の経営体質に問題があると指摘する声があり、垣内剛社長ら経営陣の引責辞任は必至とみられている。



バックナンバー


▲上へ

Copyright Bungeishunju Ltd.