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米海兵隊グアム移転経費
2006.04.27 更新
4月23日夜(日本時間24日朝)、沖縄の米海兵隊グアム移転に伴う費用の分担問題は、ワシントンで行われた額賀、ラムズフェルド日米防衛首脳による会談で、日本側が総額の59%、60億9000ドル(約7100億円)を負担することで合意した。このうち一般会計から支出するのは28億ドル(約3250億円)で、海外の基地費用負担に踏み切るのはこれが初めて。このため、政府は根拠となる新規の立法(米軍再編推進関連法案)を開会中の国会に提案し、成立を図ることにしている。
米国が要求した移転費用の総額は、102.7億ドル(約1兆1900億円)。当初、米側は75%(約8900億円)の負担を求めたが、日本側がトップ会談で「国民に説明できる額」を主張、その結果、米側の財政支出31.8億ドルに対し、日本は3.8億ドル少ない28億ドルとなった。予算措置を伴うのは、財政支出と政府出資の計43億ドル(約5000億円)だ。
日本側の負担の内訳は、隊舎や学校などの建設費(無償)28億ドルは財政から支出し、別に、政府が15億ドル(約1750億円)を新設された事業会社に出資する。ただし、これについては将来、返済されることになった。新会社は、さらに国際協力銀行からの融資も受けて民間委託方式で家族住宅を建設・管理する。また、電気・水道などインフラ整備も対象に加えた融資額は、17.9億ドル(約2100億円)――となっている。
日本は、1978年以降、在日米軍駐留経費、いわゆる「思いやり予算」を計上している。これは、日米地位協定および特別協定(87年以降、5年ごとに改定。07年から2年延長の予定)によって、施設整備費のほか、米軍基地で働く日本人従業員の給与や労務費、米軍家族の住宅建設費、水道・光熱費、学校建設費などを負担するものだ。06年度予算では2326億円が計上されている。これとは別に、米軍基地の土地借上げ料や基地周辺対策費、再編対策費なども含めると、米軍関連費用は年間約6000億余円にのぼる。
ちなみに、沖縄基地の場合、借地代が年間776億円、思いやり予算が461億円で、計1237億円が必要だった。今回の移転にかかる費用は、この8年分に当たる。しかし、以後は、この金額を負担する必要がないため財政面でもかなり軽くなる。
小泉首相は、「日米同盟の重要性を両国がしっかり認識した結果だ」と合意を評価した。しかし、民主党は、「同盟国の軍事施設移転に国費を投じることは国際的に前例がない。(今後は)国会や国民は内訳すら知らされず、合意内容だけを押し付けられることになりかねない」と批判談話を発表した。
ただ、政府が直接支出する経費は、グアム移転が7から8年かかるとすると、年平均で400〜500億円の予算が必要となる。このため、思いやり予算のカット分を充てたり、防衛予算のうちの別経費の圧縮などが検討される見込みだ。その意味で、日本にとっては、移転費用分担の合意は、「地元の負担軽減と、(安全保障上の)抑止力維持の二つを両立させるためのギリギリの結果」(安倍官房長官)だった。
これらの費用分担がはたして高すぎるかどうかだが、その議論には、日米同盟のもと、安全保障の基軸を米国に委ねている現実と、平和の代償としての応分のコスト負担をどう考えるかという前提が必要だ。ちなみに韓国における米軍基地移転では、外務省によると、総額の55%を韓国が負担する方向で調整が行われているという。また、1990〜94年には、ドイツが旧ソ連軍の撤退費用120億マルク(約1兆円)を負担した例がある。
今回の基地移転は、第3海兵機動展開部隊の司令部要員ら約8000人と家族約9000人が沖縄からグアムへ移るもので、世界規模で進める米軍再編の一環だ。この基地移転によって米国は、グアムの海軍基地を強化するとともに、海兵隊移転と空軍の攻撃機動部隊を新設し、太平洋方面での戦略拠点化を図る。背景には、軍備拡大を進める中国や、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮の動向をにらみ、中東から北東アジアに至るいわゆる“不安定の孤”に対応する戦略的な狙いがある。日本にとっては、沖縄の負担を軽減させるうえで、絶好の機会でもあった。移転は08年度から8年かけて完了する見込み。
軍事問題に詳しい森本敏・拓殖大学海外事情研究所長は、「合意は、インフラ整備にかかる費用を積み上げた結果であり、日本の負担は妥当だ。米側だけの拠出で移転を実現しようとすると、10〜15年かかる。グアム移転が決着しなければ、米軍再編全体が失敗してしまう恐れもあった」と評価している(読売新聞4月25日付)。
関連論文
筆者の掲載許可が得られない論文はリンクしていません。
96年以前の論文については随時追加していきます。ご了承ください。
◆
私の
主張
(2006年)日本防衛の対象は日本周辺のみにあらず。世界規模の米軍再編と協同せよ
志方俊之(帝京大学教授)
(2006年)米軍再編で自衛隊は米軍の一員になる。危険な集団的自衛権の行使は必至
前田哲男(軍事評論家、東京国際大学教授)
(2005年)在外米軍の削減は東アジアの不安定化をもたらす恐れがある
村井友秀(防衛大学校教授)
(2005年)運用の改善はもう限界。地位協定を改定しなければ沖縄県民の犠牲が続く
稲嶺惠一(沖縄県知事)
(2002年)地位協定は日本に不利ではない――政府には沖縄を説得する義務がある
田久保忠衛(杏林大学社会科学部教授、学部長)
(2002年)運用改善では地位協定の不公正は是正されない。条文改定こそ唯一の選択
前田哲男(軍事評論家、東京国際大学教授)
(2001年)基地の返還・縮小に拘泥せず、日本自ら戦略的意義を提案するとき
ポール・S・ジアラ(元米国防総省日本部長、軍事問題コンサルタント)
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◆
議論に勝つ
常識
(2006年)[米軍再編についての基礎知識]
[基礎知識]米軍再編で日本の負担は増えるのか?
(2005年)[米軍再編についての基礎知識]
在日米軍再編で日本の果たすべき役割とは?
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(2001年)沖縄基地の日米の評価の違いを知るための基礎知識
(2000年)周辺有事の際の日本の行動を知るための基礎知識
(1998年)特措法を検証し、沖縄経済の自立を探るための基礎知識
(1997年)沖縄の米軍基地の現状と縮小問題を考えるための基礎知識
(1997年)沖縄の基地被害の実態と自立経済への道を探るための基礎知識
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