消費者金融などからの多額の借金返済に苦しむ人々を救済するための貸金業規制法を改正する自民党内の作業が難航し、9月11日の金融調査会など合同会議は決着を持ち越した。焦点のグレーゾーン(灰色)金利を撤廃する見返りに新たに導入する「特例高金利」の取り扱いに反発が強まり、廃止や利率引き下げの見直しは避けられない情勢だ。
グレーゾーン金利とは、「出資法」の上限金利(29.2%)と、「利息制限法」の上限金利(15〜20%)に挟まれた金利帯をいう。深刻な多重債務問題解決へ向けて、最高裁は「グレーゾーン金利は違法・無効」との判決を出した。それまでは議員立法の「貸金業規制法」43条(みなし弁済規定)によって、任意の支払いであり、きちんとした契約書があり、領収書をただちに発行する――などの条件がそろえば例外的に有効とみなされていた。
金融庁がつくった貸金業規制法改正案は、グレーゾーン金利を3年の猶予期間後に撤廃し、上限金利は利息制限法の上限金利20%まで引き下げるいっぽうで、その後の最長5年間、少額・短期の融資(個人で貸出額50万円以内、返済期間1年以内、事業者で3カ月・500万円以内)に限り28%の「特例高金利」を認めるというものだ。金融庁によると、消費者金融の利用者は約3000万人、貸出残額は約15兆円にのぼり、特例高金利の対象者は約80万人、貸出残額は約4000億円とみている。
この改正案でいくと、法律の施行まで通常1年かかるのを含め、法改正から9年間にわたりグレーゾーンの高金利が温存されることになる。金融庁は、上限金利を急に下げると、中小の貸金業者がつぶれ、この結果、審査が厳しくなり、借りられなくなる人が増え、かえってヤミ金の利用者が増えると説明した。
これに対し、「これでは多重債務問題の解決に逆行するだけ」と特定高金利の導入に強く反対したのが、後藤田正純内閣府政務官(金融・経済財政担当)ら自民党の中堅・若手議員らで、後藤田政務官は9月6日、抗議の辞任をした。このため、自民党の合同会議では、特例高金利の適用期間を5年から3年に縮小する対案が示されたほか、貸金業者の経営に配慮するとして、新たに利息制限法の特例上限利息を26%に設定、3年ごとに見直しながら20%まで段階的に引き下げるとの修正案も提出された。
改正案は、連立与党の公明党との協議を経て、26日召集の臨時国会に提出する予定だが、12日、公明党の井上義久政調会長は、党内で多かった特例高金利に反対の意見を踏まえて「特例高金利は不要」と表明、与謝野大臣も12日の会見で「借り手も貸し手も必要ないということならこだわらない。世論から理解を得るために、自民党がどういう判断をするかがカギだ」と語り、金融庁の改正案から特例高金利導入を削除することを含めて修正する意向を示唆した。
今回の貸金業規制法改正をめぐっては、米国の有力金融機関で構成する「フィナンシャル・サービシス・フォーラム」が金融庁に対し、上限金利引き下げについて「人為的な金利規制は経済に悪影響をもたらす」とした書簡を送り反対した。こうした動きについて、後藤田氏は、「8月にはシーファー米駐日大使が与謝野金融担当大臣に規制強化には賛成しかねると迫った。外資系金融会社、投資銀行は、自社の利益のために注文をつけているだけだ。そうした“内政干渉”には耳を貸せない」と批判している(「週刊朝日」9月22日号)。
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