核を持たない日本が、核を持つ中国、ロシア、核を持とうとしている北朝鮮に囲まれてどう自国の安全を担保し、繁栄を確保していくのか。いずれの国も統治体制が異なり、守るべき価値は同一とはいえないだろう。北朝鮮の核開発は早晩解決されるべき問題であるが、中国やロシアの核放棄は現実的には想定されない。もちろん、これらの諸国が核を使用するという蓋然性は低いが、将来の政策は不透明な面があり、日本が脅威を受けないで生存していくためには、最低限の核抑止力は必要となる。 それでは、日本に核兵器保有の現実的な選択肢はあるのだろうか。核兵器開発の技術的可能性は別として、政治的コストはあまりに大きい。これは核拡散防止条約からの脱退を意味し、国連憲章七章の国際平和への脅威と認定されるであろうし、日本は国際的孤児となる。 したがって、基本的な統治体制と、守るべき価値を共有する米国との安全保障条約の下で、核抑止力を維持するのがほぼ唯一の選択肢となる。同じ同盟国でも、英国は自国も核保有国として、米国と核技術を共有することこそが同盟関係の基礎となっている。日本の場合、基本的な安全保障を米国に依存するがゆえに、米国と対等の関係を構築するというのは実際には容易ではない。しかしながら、戦後六〇年間の日米関係の最大のポイントは、この容易ならざる外交にあったといっても過言ではない。
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