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議論に勝つ常識
2006年版
[日本外交の軸についての基礎知識]
[基礎知識]中・印の台頭に日本はどう対応するのか?


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日本の外交的位置
 イラクで何かが起こるたび、また中国の経済に変化が見られるたび、日本の外交は変わるべきだと主張される。しかし、それを論じるには、日本の外交は何を前提としてきたのか、日本を位置づけている世界の構造はいかなるものかが問われねばならない。
 政策研究大学院大学の白石隆教授は、『帝国とその限界』(NTT出版)で、第二次世界大戦以後における東アジアの構造を次のように把握する。〈冷戦の初期、アメリカは、東アジアにおいて、ふたつの戦略的問題に直面した〉。国際共産主義運動の中心であるソ連をどう封じ込めるか、また、日本を復興させつつもアメリカの脅威にならないよう封じ込めるにはどうするかのふたつである。
 〈このふたつの問題に対するアメリカの答えが、日米、米韓、米比などの二国間の安全保障条約、基地協定の束としての地域的な安全保障体制の構築、そして経済における日本・アメリカ・東南アジア(そして韓国、台湾)の三角貿易体制の構築だった〉
 しかし、政治および軍事において日本は完全な自由を持たない〈半主権国家〉にすぎず、アメリカの戦略家ジョージ・ケナンのいう〈頚動脈に軽く置かれた手〉に運命を握られた存在にとどまる。また、原料をアジアに求め輸出先をアメリカに求めるという三角貿易体制では中心を占めたが、それはナンバーワンとなったわけではなく、常にアメリカが後ろ盾となるナンバーツーとしての役割だった。


戦後資本主義世界の構造
 こうした「半主権国家」という言葉に違和感を覚える人もいるだろうが、たとえばアメリカの国際政治学者ロバート・ジャクソンも『半国家――主権・国際関係・第三世界』(ケンブリッジ大学出版刊)において、一九世紀的な意味で「主権国家」といえる国家はすでに少なく、ほとんどが政治・軍事的に完全な自由を持たない「クエイザイ・ステート(半国家)」であり、国内における「人権」と同じような意味で、「国権」を持っているに過ぎないと指摘している。
 また、国際経済においても歴史社会学者イマニュエル・ウォーラスティンなどは、『史的システムとしての資本主義』(岩波書店)のなかで、戦後世界はたしかに国家間によって成立してきたインター・ステート・システムだが、それぞれが自立していたわけではなく、中核国家が半辺境国家を従え、さらに半辺境国家が辺境国家を支配する構図は、ほとんど変わらないと見ている。
 東アジアにおいても、戦後、社会主義化した中国、インド、ビルマなどを尻目に、経済的には次々と「離陸」した国々が、日本に典型的なように、政治・軍事的には「半国家」であり、経済的にもアメリカの「半辺境国家」であり続けたと見ることができるだろう。そこでは、いかに経済的に繁栄しようと、完全な意味での「主権国家」を目指す動きはなかった。日本も韓国も台湾も、そして東南アジア諸国も高度経済成長を実現したが、政治的かつ軍事的に主権的になろうとした国は存在しない。


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論 点 外交の軸足は米国かアジアか 2006年版

私の主張
「膨張する中国」の脅威――日米同盟の重要性はかつてなく高まっている
中西輝政(京都大学大学院教授)
東アジア共同体を視野に日米同盟を活用し、バランスある能動的外交を
田中 均(前外務省審議官、日本国際交流センターシニアフェロー)


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